2013年06月27日
関西電力株式会社
取締役社長 八木 誠様
フランスからのMOX燃料輸送に抗議し、
高浜原発の再稼働及びプルサーマル計画の中止を求める申し入れ
本日(6月27日)早朝に、貴社の高浜原発向けMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料が、フランスから海上輸送され、到着しました。2011年3月11日の福島原発事故後初めてとなる今回の輸送に対して、輸送ルートにあたる沿岸諸国からも抗議の声があがっていました。貴社は、それらの声を真摯に聴くべきです。
7月8日の新規制基準施行後、貴社は高浜原発3、4号機で再稼働の申請をすることを表明し、その際「MOX使用を考慮した申請をする」と貴社の八木誠社長は述べています。今回の輸送は、MOX再稼働にむけた環境整備ともいえ、再稼働とともにMOX利用のプルサーマル計画の実施に強く抗議します。
MOX燃料を使用することによって、これまでの原発の安全余裕度を低くし、事故による被害も大きくなると指摘されています。さらに電力会社にとってもMOX燃料の加工費、輸送費、貯蔵費、使用後の処理・処分費(未定)などこれまでのウラン燃料の費用を何倍も上回るもので、近年特に厳しい経済状況にある中で、さらに経済的負担を増すものであり、電力料金の値上げが言われる昨今、そのあり方も問われるものです。
使用済みMOX燃料の処理・処分についても何も決まらないまま見切り発車でプルサーマル計画を実施することは、「トイレなきマンション」と言われているこれまでの原子力政策の愚をまたも繰り返すものです。六ヶ所再処理工場の後につづく第二再処理工場で使用済みMOX燃料は処理されるように描かれていますが、第二再処理工場の計画はいまだ何も進まず、実現可能性すらない現状です。MOX燃料は、単にウラン燃料の使用済み燃料以上にやっかいな核のゴミと化すだけです。見通しのなく、危険なMOX利用に強く抗議します。
さらにMOX利用計画も含む日本の核燃料サイクル政策は、六ヶ所再処理工場建設や「もんじゅ」をはじめとする高速増殖炉計画そして高レベル放射性廃棄物処分問題ではすでに、技術的、経済的さらに社会的にもすでに破綻しています。そのような現実を見れば、MOX燃料の利用や再稼働そのものもできる訳はありません。
未来にこれ以上核の負の遺産を残すことは許されません。一刻も早い貴社の原子力からの撤退をあらためて強く求めるものです。
原子力発電に反対する福井県民会議
原水爆禁止日本国民会議
原子力資料情報室
反原発運動全国連絡会
連絡先 福井県福井市日之出3-9-3京福日之出ビル2F
電話 0776-21-5321(福井県平和環境人権センター)
2013年06月26日
MOX燃料利用の再稼働は許すな!
プルサーマルに未来はない!
再稼働とプルサーマル計画
6月19日、原発の新規制基準が決定しました。7月8日のからの施行後、四国電力伊方原発、関西電力高浜原発、九州電力川内原発、同じく九州電力玄海原発、北海道電力泊原発などが再稼働に向けた申請をするのではと予想されています。このうちプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマルを実施すると、すでに表明しているのが、関西電力高浜原発3、4号機です。今回の新規制基準では、MOX燃料を使うプルサーマルについては何も記述がなく、手続きはこれまでと同じと言われ、特に高浜原発3号機は既にMOX燃料の設置変更許可が下りているため、今回の新基準の制約を受けることなくプルサーマルを実施することが可能と言われています。
その他、四国電力伊方3号機、九州電力玄海3号機でもプルサーマルが行われるのではないかと言われていますが、まだ明らかではありません。
その高浜原発に、6月27日の早朝より、フランスから返還されたMOX燃料が運び込まれることになっています。MOX燃料を使うことの地ならし(環境整備)の意味もあり、問題です。今後の再稼働で、MOX燃料を消費できるかどうかは、六ヶ所村の使用済み核燃料の再処理工場の稼働状況を左右することにもなります。再稼働時にMOXを使うにしても、地元の理解が前提であり、反発が強ければ見送られる可能性もあります。今後の自治体の対応が焦点となってきます。
たとえ再稼働時に4基で実施したとしても、海外保有分と再処理工場で生産するMOXは消費しきれません。核兵器にも転用できるプルトニウムの余剰保有は国際的にも懸念を抱かれます。プルサーマルが進まなければ、再処理工場が本格稼働しても、運転を制限される可能性があります。
電事連会長も務める八木誠関西電力社長は、「核燃料サイクルに対する政府の姿勢も見極める」として、政府の明確な推進姿勢も条件に挙げて、政府へ今後の対応に、覚悟と責任を問うています。
見切り発車のプルサーマル
一方、燃やし終えたMOXの最終的な処分方法はいまだ未定で、現行の計画では、六ヶ所再処理工場に次ぐ第二再処理工場で再処理するとされていますが、第二再処理工場の実施主体は未確定のままです。現在の六ヶ所再処理工場は、電力会社や民間会社を中心とした商業用施設として建設されていますが、すでに2.2兆円という巨費を投下してもいまだ完成まで至っていません。
さらに電力会社の中核であった東京電力が福島原発事故によって、その経営体質が弱体化しており、次の第二再処理工場が電力会社などの民間主体で建設されるとは到底考えることができません。まして、再処理工場をいまさら国策会社として進めるとなると、これも巨額の資金を投入してまで運営ができるなどとは、今の財政状況からみても考えられません。どちらにしても第二再処理工場は、MOX燃料を使うための方便でしかなく、現在の核燃料サイクル政策は、必ず行き詰まることは明らかです。
もんじゅまたも機器点検もれ-2100件
核燃料サイクルのもう一つの要である高速増殖炉で、MOX燃料を本格活用することが期待されていますが、その原型炉であるもんじゅが、1万点近い機器の点検漏れの問題で、原子力規制委員会が5月末に事実上の運転禁止命令を出しました。
現在、もんじゅは運転再開のめどが立たない状況となっていますが、今月21日には、日本原子力研究開発機構が、さらに2100点もの未点検機器が見つかったことを発表し、「さらに信頼を落とした」(弟子丸剛英所長代理)と陳謝する場面がまたもありました。施設の劣化とともに職員の質の劣化も問題となっている高速増殖炉開発に、これ以上未来がないことは明らかです。
厳しい核燃料サイクルをめぐる状況
核燃料サイクルを取り巻く環境は、一段と厳しくなっていることは確かで、ここから抜け出せる道を原子力推進派は持ち得ていません。その中で、六ヶ所再処理工場の建設や、もんじゅの運転再開、MOX燃料の利用など、誰も責任を引き受けようとすることもなく、しゃにむに事業を推進しているだけです。安倍首相も「核燃料サイクルの推進」を打ち出していますが、その具体策はいまだ見えてきません。まさに政治家の無為無策ともいえるものです。
安倍政権の押し進める原子力政策にいまこそ「NO」の声をあげましょう。六ヶ所再処理工場をはじめ、核燃料サイクル政策の破たんは明らかです。プルトニウム利用政策にも「NO」の声をあげましょう。
2013年06月26日
原水禁は、原子力資料情報室と共同して新規制基準に関しての申し入れを6月24日、国会で行いました。
出席者は、原水禁から藤本泰成事務局長、道田哲朗副事務局長、井上年弘事務局次長ほか。原子力資料情報室から伴英幸共同代表、西尾漠共同代表。また申入れ側に近藤昭一衆院議員。原子力規制委員会からは、原子力防災課・刀禰正樹総括補佐、技術基盤課・田口達也課長補佐、安全規制管理官・菊川明広管理官補佐ほかの出席でした。規制行政に責任を有す規制委員からの出席はありませんでしたが、原子力規制委員会の決定をもって公布された新規制基準についてきびしい話し合いとなりました。
原水禁と原子力資料情報室が、この規制基準決定に対し、指摘した論点は、第一に新規制基準が原発の再稼働のための「扉」となっており政治的圧力に傾斜して拙速な基準である点。第二に福島第一原発事故原因が究明されていない点。第三に立地審査指針を廃止した点、福島事故の影響があまりに広域なものとなったが、これを逆手にとって立地条件の概念を後退させている点。また第四に特定安全施設の設置に猶予期間を設けている点、そして第五に施設と管理機能を中心とする規制基準だが、防災対策は規制審査の対象ではない点などでした。とくに防災対策について、この日の交渉において規制委員会事務局から「防災対策の進捗は法律的にも稼働審査の対象ではないが、今回の審査とは別に自治体の同意プロセスという過程があると理解している。自治体の同意ぬきに動かせない。自治体の同意にとって最大の課題は防災対策の成否であると理解している」と回答がありました。
原水禁と原子力資料情報室は、6月20日、「新規制基準決定に対する共同声明」を発しました。安全基準から規制基準に代わったが、その基準も今後運用で薄められる可能性があります。「世界一厳しい基準」という触れ込みの、しかし再稼働の道をひらく手続きが成ったことに最大限の注意をはらわねばなりません。
各電力会社の申請と審査、これら規制行政の監視も重要なとりくみとなりました。
2013年06月25日
原子力規制委が決定した新規制基準に関して、24日、 原水禁として原子力資料情報室と共同で以下の申し入れを行ないました。原発の再稼働の前提になるものであり、多くの問題を残しています。
2013年 6 月 24 日
原子力規制委員会
原水爆禁止日本国民会議
議 長 川野 浩一
原子力資料情報室
共同代表 伴 英幸
新規制基準に関しての申し入れ
日々の規制行政の遂行に敬意を表します。
6月19日に法制化された新規制基準について申し入れをします。
まず、5月10日まで行われた新規制基準案へのパブリックコメントが充分な審議がなされないまま法制化されたことは問題を残すものです。
どのようにみても原発推進勢力による圧力により、本規制基準の決定、再稼働審査の促進が図られており、このことは原子力規制委員会の存立意義をゆるがすものです。規制基準は、その運用において、検査体制、人員など、総合的な観点からの対応が重要です。更にリスクというものは、想定されない現象が起こるのが確実なのですから、バックフィットの原則を確固たるものにする必要があります。
また、「再稼働」に関わる審査は、安全規制管理官および安全規制調整官らによって行われると思われます。BWR担当の管理官は前原子力安全・保安院原子力発電検査課長、PWR担当の管理官は前原子力安全・保安院原子力安全基盤課長です。調整官らの多くも、原子力安全・保安院で審査や検査に当たってきました。「規制の虜」になってきたかれらが正しく審査を行うことをどのように保証するかが問われます。審査体制について、明らかにされるよう求めます。
また、以前に自身が審査・検査に当たった原発については担当しないといったことは考慮されるのでしょうか。この間規制庁から出されている会合資料でも、危険性が小さいと印象づける記述が散見され、会合における質疑でも「審査の中で確認されている」と以前の審査に何ら疑問をはさまない答弁がなされていることを考えるなら、正しい審査が行われる保証はさらに重要な課題です。
これらの点で、新規制基準は、幾つかの課題で足らざるものであり、このまま運用されることには大きな問題を持つと考えます。
ここに新規制基準について改めて見直しをされるよう求め、申し入れます。
記
1.規制基準の中に立地審査指針をしっかりと位置づけてください
規制基準が提案され7月8日から施行されますが、この中に立地審査指針が入っていないことは納得できません。立地審査指針は「立地条件の適否を判断するため」原則的な立地条件と基本的目標を定め、非居住区域の設定や人口密集地帯を避ける具体的な条件と目安を定めています。この考えの重要性は規制基準でなくなることはありません。その際、福島原発事故の反省の上にたち、非居住区域の拡大が必要になると考えています。
また、この中で扱われている概念のひとつに集団線量がありますが、これも非常に重要な概念で、ICRPやIAEAが集団線量の考えを放棄しようとすることには納得できません。チェルノブイリ原発事故など大規模な放射能放出事故が起きた現実に立つなら、集団線量の考えを適用しないのは、事故が与える心理的影響と原発に対する拒否の住民感情を緩和するための政治的な対応であると断じて過言ではありません。これは許されないことです。被曝の影響を一個人に対するリスク増加率で示しても意味がありませんし、この考えは間違っていると考えます。なぜなら、今日の放射線被曝とこれによる影響は、広島・長崎の厖大なデータや原子力作業従事者などへの追跡調査、これら被曝集団を基に導き出されているものだからです。つまり重要なのは放射能放出によって社会全体が受ける影響です。
ところで規制基準には、立地審査指針を廃止するとも書いていないので、旧指針が存続していると考えられます。とすると用語など矛盾するところが出てきます。例えば、立地審査指針では、重大事故・仮想事故という従来の概念で書かれており、重大事故は「敷地周辺の事象、原子炉の特性、安全防護施設等を考慮し、技術的見地からみて、最悪の場合には起こるかもしれないと考えられる重大な事故」と定義されています。他方、規制基準では重大事故を「発電用原子炉の炉心の著しい損傷、燃料貯蔵設備に貯蔵する燃料体の著しい損傷」と定義し、仮想事故は採用されていません。
2.特定安全施設等の完備に5年間の猶予期間を設けないでください
第二制御室やバックアップ電源などの「特定安全設備」や加圧水型軽水炉のフィルターベントについて、5年間の猶予を与えるとされています。基準自体に自ら穴をあけるような不合理な措置であり、その間の安全を保証できなくなります。この猶予期間の設定は、新規制基準の実効性そのものを阻害するものです。
3.単一故障指針でなく共通要因故障も規制基準の中に位置付けてください
新基準は単一故障の仮定に立って構築されています。ただ、「重要度の特に高い安全機能を有する系統は、その系統を構成する機器の単一故障の仮定に加えて、外部電源が利用できない場合においても、その系統の安全機能が達成できる設計であること」(安全設計審査指針9)と外部電源のみを共通要因としているだけです。外部電源以外の共通要因も考慮しなければ安全の確保ができないと考えます。
4.各原発の敷地内外の断層の再評価と、これに基づく耐震安全性の再審査を進めて下さい
耐震指針の見直し(2006年)に基づき、各原発の耐震バックチェックが進められている最中に東北地方太平洋沖地震(2011年)が起きました。女川原発、福島第一、第二原発では最大地震動として評価された基準地震動(Ss)を部分的ではあるが超える結果となりました。評価が過小だったと言わざるを得ません。見直した結果がそれですから、各原発において再度見直す必要があります。
2008年3月以降、各地の原発の耐震安全性のバックチェックの審議過程では、電力各社は、活断層の連動を考慮しなかったり、断層を破砕帯として動かないことにしてきました。原子力安全・保安院もこれを追認してきました。しかし、福島原発事故を受けた今、新たな規制基準・ガイドラインにしたがいながら、ただし、震源を特定せずに策定する地震動ではこれまでの議論を考慮してマグニチュード7.3を前提として、各原発の敷地内外の断層の再チェックが必要だと考えます。
5.40年超の運転に道を開くべきではありません
原子力規制委員会では「運転延長を認める条件を厳しくした」と言われています。しかし、そもそも40年を超えて運転を認めるべきではありません。20年の運転延長を認める但し書きは削除するべきです。40年の間には導入した技術は古くなり、安全性の維持も困難になります。機器類を交換するようになってきていますが、交換できない機器の安全性が保証されているわけではありません。制限が原則であり、運転延長はあくまで特別な例外であったはずなのに、例外を通常の手続きとすることは許されません。
6. 核セキュリティには慎重かつ適切な対応が求められます
原発、研究用原子炉等に加えて、ウラン濃縮工場、再処理工場等を有することから、慎重な管理が求められます。他方で、核セキュリティを理由とした情報の非公開がすすみ、事故対策・防災対策の障害となっています。また、自衛隊による警備構想や、雇用者の個人情報調査など人権を侵害することは、核セキュリティのためであっても容認できません。
7.火災対策は初期消火に限定すべきではありません
初期消火のみが事業者の責任で、あとは消防に任すというようなことでは、とても現実を見ているとは思えません。火災発生時には直ちに消防に通報し、自衛消防隊が初期消火に当たるとともに、消防の到着後も消火の確認まで積極的に役割を果たすようにするべきです。
8.規制基準は、災害対策の確立を包摂して確立されるべきです
原子力災害対策指針は、福島第一原発事故の究明による新たな検討、知見、また国民からの意見を勘案して、防災対策の実効性を高めていくことが重要です。この原子力災害対策指針の示唆を受けて、当該施設自治体における「地域防災計画・原子力災害対策」および「マニュアル」等が改定されています。この点で以下の課題について求めます。
1)原子力規制基準は、原子力災害対策と一対をなすものであり、当該施設の再稼働、運用の是非にあたり、原子力災害対策指針および当該施設自治体および周辺自治体の地域防災計画・原子力災害対策が確立されることを前提的条件とすること。
これら災害対策は、単に計画の策定にとどまらず、防災対策がトータルとして実態上確立されていることを条件とすること。
2)原子力災害対策指針は、新たな検討、知見、また国民からの意見を勘案して、随時、この機能を高める立場で改定すること。
3)「原子力災害は原子力事業者の事業に由来し、事業者が一義的な責任を負う」としていますが、国の主体的な責任についても明記するよう改められること。
4)原子力災害対策指針は住民の被曝を最小限に抑えることを至上の目的として避難基準等の策定を行うべきです。避難にはそれなりの時間が要することを考えれば、6月に改定された原子力災害対策指針の防護措置のための初期設定値はなお高すぎます。見直しを求めます。
また、指針に基づいて各自治体が策定する防災計画に関しても責任を持って指導し、実効性ある災害対策が策定できない地域について、原発の運転を許可しない対応が必要です。
9.高速炉にも非常用炉心冷却装置が必要です
ナトリウム冷却高速炉は従来の考えを踏襲して非常用炉心冷却装置が不要としていますが、想定外の地震によりガードベッセルが壊れない保証はありません。ナトリウム漏えいにガードベッセルの破損が加われば、高速炉の特性である核暴走爆発事故あるいは炉心溶融事故(この場合、再臨界による爆発事故も考えられる)に進展する恐れが高く、そうなれば、プルトニウムを大量に含む燃料だけに、どちらのケースも原発の過酷事故をはるかに越える災害が避けられません。非常用炉心冷却装置が確実に過酷事故を回避できる保証はありませんが、不可欠の装置と考えます。
また、事故によって放射性物質のみならず、ナトリウムが大量に大気中に放出され、水蒸気などと化学反応を起こせば、人体に有害な水酸化ナトリウムを生じます。ナトリウム冷却型高速炉の特性に応じた過酷事故対策が求められます。
10.現在検討中の「核燃料施設等の新規制基準」について
現在策定中の「核燃料施設等の新規制基準」についても、いくつかの点を指摘しておきたいと思います。
「新基準策定に当たって留意すべき施設の特徴」にあるように、「異常事象の進展が比較的緩やか」なケースが多いとはいえ、臨界事故や爆発事故もありえます。大きな事故が起こるたびに「想定外」が問題となることを考えれば、特徴としては例外とされている点をこそ重視するべきです。
また、「多種多様な事象進展シナリオ」と「長期間の安全性について考慮が必要」とする特徴を十二分に考慮すべきです。後者については、廃棄物埋設施設だけでなく、使用済み燃料貯蔵施設や廃棄物管理施設についても考慮が必要です。
上述の特徴からシビアアクシデント対策では恒設設備よりも可搬型設備で行うことが有効と考えられていることは、大筋としてはそうであるとしても、どのような可搬型設備をどのように配置するかによります。また、恒設設備が望ましいところもあると思われます。安易に可搬型でよしとするべきではありません。
同じく「特定安全施設」が不要と考えられていることも、発電用原子炉と同じものは求められていないにせよ、「緊急時の対策に必要な対策が講じられる設計」とあるだけでは、およそ信頼性に欠けると思います。
再処理施設の高レベル濃縮廃液について、電源喪失により冷却機能が失われても放射性物質の放出までには時間的余裕があると考えられているように見受けられます。爆発事故に対しては一過性であるとし、発生防止に重点を置いた対策が要求されているとされていますが、「一過性」という見方でよいのでしょうか。また、爆発事故は化学プラントとしての事故との捉え方と思われます。ロシア・マヤック工場の貯蔵タンク爆発(1957年9月)のような事故は考慮されなくてよいのでしょうか。
福島第一原発の使用済み燃料キャスク貯蔵施設は、津波により一時水没し、継続使用ができなくなりました。地震等の自然現象、人為事象により建物が破壊され雨ざらしになった場合も、同様の事態となりえます。貯蔵中のキャスクの搬出が求められても、搬出先が容易に見つかる保証はありません。「海水の浸入にもキャスクは機能が維持される」というだけでよいのでしょうか。
また、策定中の規制基準は既設設備を前提とし、貯蔵中のキャスクの補修や詰め替えは考慮されていませんが、それでよいのでしょうか。
2013年06月20日
2013年6月20日
原水爆禁止日本国民会議
原子力資料情報室
新規制基準決定に対する共同声明
6月19日、原子力規制委員会は、原発に関わる新規制基準を決定した。この決定と同時に実質上同基準が政令等として公布され、7月8日には施行する予定となっている。
原子力規制委員会はこの新規制基準づくりにあたり、「あくまで科学的判断を基とする」と述べてきた。しかし決定された新基準が、2011年3月の東電福島第一原発事故の究明に立脚し、科学的、技術的に純化した新基準たりえているかと言えば、不十分な基準だと断じざるをえない。
原発そのものが危険な存在であり、過酷事故の想定は無限にあるとする認識に立つなら、科学的、技術的見地の規制によって、そのリスクを補えるのかという前提に私たちは疑問をもつ。しかし、もしかりに、新規制基準がこの疑問に応えるものであるなら、それ相応に科学的、技術的規制でなければならないが、原発推進勢力の隠然たる圧力の中、規制基準は薄められ、原発の再稼働に道を開く方便となるものなら、許されるものではない。
新基準には、いくつかの点で誤りがある。
原発の立地条件の適否を問う立地審査指針で集団線量の考え方を退けていること。
福島第一原発事故で応急対策の柱とされてきた常設直流電源設備(第3系統目)、第二制御室など「特定重 大事故等対処設備」に係る基準に5年間の猶予を与えること。
単一故障の仮定に立って構築され、外部電源以外の共通要因が考慮されていないこと。
原発の40年制限に例外を与え、明らかな規制基準の後退を裏付けるもの――などである。
また、原子力規制基準と原子力災害対策は一対をなすべきであり、「再稼働」の是非は、規制基準と同等に当該施設自治体および周辺自治体の原子力災害対策が確立されることを条件とされねばならないが、原発の基準と防災対策は切り離されている。
そして、今回の新基準の策定過程で大きな疑問となるのは、5月10日まで行われたパブリックコメントへの応募意見について、充分な審議がなされなかったことだ。
また、新基準を運用する規制行政の態勢の問題がある。
検査体制、人員など、総合的な観点からの対応が重要だが、「再稼働」に関わる審査は、安全規制管理官および安全規制調整官らによって行われると思われる。BWR(沸騰水型)担当の管理官は前原子力安全・保安院原子力発電検査課長、PWR(加圧水型)担当の管理官は前原子力安全・保安院原子力安全基盤課長ではないか。調整官らの多くも、原子力安全・保安院で審査や検査に当たってきた。「規制の虜」になってきたかれらが正しく審査を行えるのか疑問でならない。
いずれにしても、新規制基準の法制化によって、不十分な新基準によって審査され、手続きとして原発の再稼働の扉を開くこととなる。
これでは原発事故の再発を防げない恐れが高く、だからこそ、原水禁と原子力資料情報室は、拙速な新基準の施行をするべきでなく、パブリックコメントへの対応含めて、改めて新規制基準を問い直すことを求める。その上で、再稼働審査にあたっては、新基準と防災対策を一体のものとして関連付けたうえで厳正な審査をするべきと考える。
2013年06月18日
高市早苗自民党政調会長の発言に対する抗議声明
福島第一原発事故の放射能被害によって、野菜の出荷停止に追い込まれ、そのことを悲観した自殺者に対して、東京電力は原子力損害賠償支援機構の調停によって損害賠償に応じましたが、謝罪は拒否しました。東京電力との交渉の席上、親族は、「『原発事故による死者はいない』と言わせないために、そして脱原発のために、私たちに謝罪させるために申し立てを行いました」と表明しています。
2012年3月末の段階で9人の自殺者が東日本大震災と福島第一原発に伴う震災関連死であると認定されています。復興庁の調べによるとこれまでの震災関連死は、福島県が1383人で全体の55%、そのうち原発事故による避難地域で暮らしていた人が8割を超すこととなっています。
福島原発事故後、大熊町の医療法人博文会双葉病院では、避難を待つ中で、入院患者4人が亡くなり避難後も3月末までに50人が死亡したとされています。「避難してほっとしたのに、運ばれてきた患者が死んでいく、絶望的でこの世の終わりに思えた」とその場にいた医師は語っています。避難での疲労やストレス、持病の悪化など多様な要素が絡み合って亡くなられたと思いますが、しかし、その原因が福島原発事故にあったことは明らかです。
このような中で、自民党高市早苗政調会長は、神戸市内での講演で「福島原発事故が起きたが、それによって死亡者が出ている状況ではない。原発を最大限の安全性を確保しながら活用するしかない」と発言しました。
5月現在でも、福島県民16万人が、福島原発事故による放射性物質の汚染により、住む家を追われ避難生活を余儀なくされています。将来への見込みが立たず、先の見えない避難生活の中で、健康を害して亡くなる人が後を絶ちません。まさに「命」を削る生活が日々営まれています。高市早苗政調会長の発言は、福島県民の心情を傷つけ、きびしい生活の中で日々努力している県民を冒涜するもので許すことはできません。今、政治家がするべきことは、傷つきうちひしがれる人々の心に寄り添い、地域社会の復興のために出来うる最大の支援を行っていくことです。福島県民が置かれている現状をしっかりと理解しているならば、このような発言が出てくるわけはありません。政権政党の政調会長という要職にある者の発言として大きな問題です。 脱原発運動の先頭に立ってきた原水爆禁止日本国民会議は、高市早苗政調会長に対し、発言の撤回と福島県民への謝罪、国会議員を自ら辞職することを強く要求します。
2013年6月18日
原水爆禁止日本国民会議
議長 川野 浩一