2015年8月

長崎大会第2分科会「福島原発事故と脱原発社会の選択」

2015年08月08日

長崎第2分科会

ベーベル・ヘーン(ドイツ・みどりの党)
   ドイツでは2002年に15年かけて原発の段階的廃止法を制定し、その後、保守党によって廃止か延期されたが、2011年の福島原発事故で再び段階的廃止を決定した。段階的に廃止して原発ゼロになる。ドイツでは、自然エネルギーが拡大し、コスト削減と雇用創出できた。ドイツより日本は日照時間も長く風も強く、日本でも必ず成功する。その為には、国民の声や市民運動は不可欠だ。

藤井石根(明治大学名誉教授)
   講師の藤井石根さんから、福島第一原発事故が起こり普通ならば日本のエネルギー政策を見直すべきだが、経産省が示した2030年の電源構成案は、原発の発電比率は20~30%にしている。こうした方針を出す審議会メンバーを選出過程に問題があり、政府は、事故の責任を曖昧にし、時代の歯車を逆に回そうとしている。COP2の温室効果ガス排出削減目標でも原発再稼働ありきで、再生エネルギーはこれ以上要らないというメッセージだ。今後は、太陽や風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生エネルギーに立脚した社会を実現すべき。

澤井正子(原子力資料情報室)
   澤井正子さんからは、福島原発事故の現状をお話ししていただきました。汚染水の対策も全くコントロール出来ておらず、今も事故は続いている。また、国は、帰還困難地区を解除しているが放射線量は今も高く、除染廃棄物の中間貯蔵施設と同様で人権侵害だ。事故の収束がいまだ困難な状況に置かれている。

質問として
   福島の子どもたちの被曝状況は?-電力会社が電気料金値上げの理由として原発維持費を挙げた。
   原発の耐震性の問題は?-被曝労働時間を、政府は拡大しようとしている。
   意見として、原発使用するバブル作成する会社に勤務していたが反原発運動に参加し、再雇用を拒否された。平和で安心して生活できる社会の実現を求め運動している。

海外ゲスト、講師からの回答
   ドイツでは、環境団体が原発企業への政府からの補助金リストを公開し、原発は低コストというウソを明らかにさせた。被曝労働も政府は、原発企業に寄り添い、労働者不足を解消させるためで無責任だ。耐震性についも、ドイツでは、試験的に原発を稼働させたが住民運動によって3年で停止させた、そういうリスクがあれば、辞めるべきだ。子どもの被曝調査は、県が実施、癌発症率は高いが原発事故が原因ではないと政府、東電は考えている。

福島からの報告
   未だに放射能数値は高く、学校現場では帰還困難地区の子どもたちが、仮設住宅から通学しているが、年々減っている。18歳未満の甲状腺検査も年齢で区切られて、問題が多い、高速道路の全面開通は、原発から近距離で、除染廃棄物を積載したトラックが事故を起こす可能性もある。鹿児島からの報告
   川内原発3号機増設は、県民運動で凍結させたが再稼働を強行しようとしている。課題は、避難計画や888tの使用済み核燃料を運搬する計画だ。経産省への働きかけ、署名活動、自治体決議、陳情などの運動を強めているが九電の杜撰な対応が続いている。再稼働予定の8月7~11日にかけて抗議行動を行う。

まとめ
   ベーベルさんからは、脱原発に向けた議論は、市民運動からドイツでは始まっている。日本との違いは、政府も含めて脱原発を意思統一した。再生可能エネルギーを増やし、コスト削減によって原発の必要性を克服した。藤井さんからは、核と人は共存できない事が確認された。持続可能な社会を実現し将来子どもたちに安全な世界を。同時に、戦争法案を廃案にし、平和憲法を守る取り組みが提起された。澤井さんからは、原発事故による汚染水、放射能の拡散、汚染浄土の問題が提起された。2度とフクシマの状況を作ってはいけない事を、みなさんと確認したい。

長崎大会第1分科会「脱原子力1学習・交流編-再稼働問題と日本のエネルギー政策」

2015年08月08日

長崎第1分科会

   第1分科会では、海外ゲストを含む3名の講師から講演があり、4つの地域から報告があった。主な内容は下記の通り。約300名参加、うち初参加は50名程度。

1. 『我々の責任を再検証する』  シュウ・グァンロンさん(台湾)
   台湾国立大学のシュウ・グァンロンさんより、台湾の原子力事情と運動の課題について、報告があった。
   台湾には3つの原発があり、もう1つ休止している原発がある。台湾の原子力エネルギープログラムは、核兵器プロクラムを隠すために60年代後半に始まり、今日まで厳密な機密情報として取り扱われてきた。
   台湾の原子力エネルギーを所管する「行政院原子能委員会」は、本来の規制機関の役割より国営台湾電力のパートナーとして機能し、多くのことが隠されてきた。①断層の長さを実際により短くした、②放射能に汚染された地域・建物が多くあるが、秘密にされてきた(明らかになった今も、175マイクロシーベルトのアパートの中で暮らしている人も)、③蘭嶼島の低レベル放射性廃棄物貯蔵施設は缶詰工場と偽っていた、④高い放射線量の中で労働を強いていた、⑤竜門(ルンメン)原発建設で材料の手抜き、勝手に1000もの変更をした、ことなど。しかし、抗議・デモなどを経て、2号機の全面停止、1号機は暫定的封鎖とした。他にも、老朽化した原発の延命、核兵器への転用の動きなどがある。
   こうした状況の中、福島原発事故がすべてを変えた。市民は、情報の透明性や意思決定へのアクセスなど要求しなければならない。私たち自身が、問題解決すべきであり、それが責務だ。

2. 『再稼働問題と日本のエネルギー政策』 西尾 漠さん(原子力資料情報室)
   続いて、西尾漠さんより、「再稼働」に向けた全国の原発の状況が報告された。「新規制基準」申請は25基/43基、25基中35年超は4基、また、「高経年化」炉は、コストをかけた分は寿命延長してでも回収する必要があるため、様子見の状況にある。つまり、「再稼働」は、今、目の前の原発を動かすという問題だけではなく、長く動かすということ、脱原発から遠のくことを意味する。場合によっては、新増設もあり得る。脱原発の分かれ目に来ている。川内原発1号機の再稼働が11日に迫っている。仮に動かされたとしても、問題を市民に訴えていくことが大切と指摘した。
   また、再稼働を許すと、①大事故の可能性、②プルサーマル再開、③使用済み核燃料、高レベル放射性廃棄物増大、④核セキュリティ強化、⑤大停電、⑥電気料金再値上げ、⑦温暖化対策後退などの問題が生じる。また、政府の「電源別発電電力量と長期エネルギー需給見通し」は、2030年に原発20~22%とし、電力需要も大幅に増加している。しかし、電力需要はフクシマ原発事故以前から減少傾向にある。原子力を使うには電力需要を増やさないと成り立たないためだ、また、石炭は変化がなくLNGを減らしている。いかに政府の見通しがでたらめかがわかると批判した。

3. 『司法が市民の力で原発を止めるために』 海渡雄一さん(弁護士)
   続いて、海渡雄一さんより「原発訴訟」を中心に報告があった。
   原発を止めていく方法として「司法判断」がある。2011年7月に「脱原発弁護団全国連絡会」を結成した(海渡さんは共同代表)。
   2014年5月21日、福井地裁で大飯原発の運転を差し止める判決が出された。海渡さんは第1回口頭弁論で「福島原発事故には、司法にも責任がある」と厳しく指摘し、全国提訴の最初の成果となった。今年4月21日、福井地裁(樋口英明裁判長)は高浜原発3,4号機の運転差し止めを命じる仮処分を決定した。関西電力は裁判長の忌避請求する中、また、裁判長自身の転勤がある中、樋口裁判長は職務代行辞令を出してもらう中での決定である。これは、司法が現実に再稼働を止めたものである。一方、川内原発は、仮処分却下決定がなされたが、完全には負けてはいない。裁判長は「決定」の結論において、「今後、さらに厳しい安全性を求める世論が高まれば、その安全性のレベルの下で判断すべき」との自己の却下理由を否定する見解も述べている。この闘いは、高裁で勝つ。その瞬間に(再稼働が強行されたとしたら)川内原発は止まる。
   また、国と東電の自己責任について、すでに津波対策を講じるよう予測できていた過去の経過と検察審査会が元東電3幹部が強制起訴されたことに触れ、①事実を知ること、②福島原発事故を肌感覚で知り、二度と繰り返さないと子心で感じること、③この闘いは必ず勝てると信じること、そのことで「原発は私たちの知恵と力で止められる!」と、力強く訴えた。
   その後、鹿児島(川内原発)、佐賀(玄海原発)、愛媛(伊方原発)、新潟(柏崎刈羽原発)の再稼働をめぐる状況について報告があり、参加者全員で全国の原発の再稼働を許さないたたかいを原水禁に結集して闘う意思確認を行った。

原水爆禁止世界大会 長崎大会 基調提起(藤本泰成・大会事務局長)

2015年08月07日

   2015年8月6日、安倍首相は広島の平和祈念式にのぞみ、挨拶の中で「非核三原則」に言及しませんでした。その後の会見において「非核三原則は堅持する」と表明したものの、被爆者の方々からは非難の声が相次ぎました。政府は「特段の意図はない」としています。であれば、なおのこと挿入すべきではないでしょうか。安倍政権は、「非核三原則」など全く気にもしていない、思いも至らないというのが事の真相だと思います。
   安全保障関連法案を審議する参議員特別委員会では、中谷元防衛大臣が質問に答えて「法制度上は、自衛隊の支援活動における核兵器の運搬も可能」と発言し、横畠裕介内閣法制局長官も同様に「憲法上、核兵器を保有してはならないとと言うことではない」と答えています。広島出身の岸田文雄外務大臣は「核兵器を自衛隊が輸送できるということを、今知った」「核兵器へのこれまでの日本の姿勢を考えれば、運搬することはあり得ない」と発言しました。しかし、日本政府が「非核三原則」を宣言したのは、今日昨日の話ではありません。被爆国日本が、核兵器をめぐる長い議論の積み上げの中でつくりあげた「国是」といわれている原則です。

   特段の意図はないとして非核三原則に言及しなかった安倍政権は、私は、特段の意図なく核兵器を輸送し、特段の意図なく核兵器をもつことも考えるのだろうと思います。「三度許すまじ」とするヒバクシャの思いに寄り添い、「核と人類は共存できない」として「核絶対否定」の立場で運動してきた私たちは、核兵器廃絶への確固たる信念を持ち続けてきました。そして、敗戦の日から、日本社会は過去の過ちを真摯に反省し、決して戦争をしないと誓ってきました。戦後70年、全てはそこから始まります。歴史に学ばず、平和への信念を持たない政治には、退陣していただきたい。その思いを強くしています。

   今年は、核不拡散条約の再検討会議の年でした。残念ながら合意文書の採択には至りませんでしたが、「核兵器禁止条約制定に向けた議論を求める」ことを内容とする、オーストリアが提唱した誓約文書には107カ国が賛同しました。パン・ギムン事務総長も、声明の中で「核兵器の非人道性がより広く知られることで、核兵器の禁止と廃絶に向けた有効な措置が講じられることを期待する」と述べ、賛意を示しました。ヒバクシャの願いは、確実に広がりつつあります。
   しかし、米国の核の抑止力を頼り、先制使用を容認する日本政府は、この誓約文書に賛同しませんでした。唯一の戦争被爆国として核兵器廃絶を主張しながら、一方で核抑止を持って自国の安全を保障するとする日本政府の姿勢は、ヒバクシャを愚弄し、その思いを踏みにじるものであり、その主張は決して諸外国に受け入れられることはないでしょう。

   2011年3月11日の東日本大震災、福島原発事故から4年と4か月たちました。現在、日本の原発は一基も稼働していません。日本社会の世論は、脱原発を表明しています。自然エネルギーを中心とした社会を求めています。 しかし、安倍政権は新エネルギー基本計画を策定し、2030年にも原発の稼働率を20%から22%を確保するとしています。これは、新らしい原発をつくらなくては達成できない数字です。九州電力は、8月11日に川内原発を再稼働すると表明しましたが、私たちは電力不足の声を聞いていません。

   原子力規制庁は、規制基準を満たしたとしても原発が安全とは言えないとしています。しかし、安倍政権は「規制庁が安全とした原発は、再稼働する」方針としています。再稼働の責任はどこにあるのでしょうか。
   政府は、起こりうる事故に備えて「避難計画」の策定を義務づけましたが、しかし、再稼働の前提とはなっていません。再稼働するとする川内原発周辺30km圏内の85の医療機関において、避難計画を策定しているのはわずか2施設と言われています。入院患者の多くが、事故の際には避難の手段を失い、逃げ場を失ってしまうでしょう。福島の原発事故の反省はどこに行ってしまったのでしょうか。

   その福島で、事故をなかったものにしようとする政策が進んでいます。自主避難者への無償住宅提供、商工業者の営業補償、避難者への精神的保障の全てを打ち切って、2017年度末までには年間50mSv以上の帰還困難区域を除いて、住民を帰還させるというものです。地域の全てで放射線量は安全なレベルなのでしょうか、子どもたちは自由に野山で遊ぶことができるのでしょうか、医療や教育や商店などの生活の基盤整備は十分なのでしょうか。現実を見据えるならば、これは棄民政策というものだと思います。
   福島の住民は、原子力村の復活のために、捨てられるのだといえば、言い過ぎなのでしょうか。そうではないはずです。フクシマを忘れてはなりません。そして、繰り返してはなりません。

   沖縄県の翁長武志知事は、第三者委員会の報告を受けて、埋め立て承認を取り消す意向を示唆しています。翁長知事の意向は、沖縄県民の思いに寄り添い、県民の安全安心と沖縄県の将来を見据えてのものです。そのことのために、国家権力ともきびしく対峙をする姿勢は、心から共感するものです。 沖縄の歴史、あの地上戦と戦後の米軍支配に目を向けるならば、私たちの選択肢は明らかです。基地問題においても、貧困の問題においても、原発の問題においても 多くの自治体に、住民の生活と安全の立場から、ものを考え対応していくこと、住民の将来をしっかりと見据えることが、求められているのではないでしょうか。

   自民党の磯崎陽輔首相補佐官の、安全保障関連法案の「法的安定性」は必要ないとする、日本国憲法とそれに基づく法治国家を無視する発言がありました。
   安全保障法制に反対する学生たちを「彼ら彼女らの主張は『だって戦争に行きたくないじゃん』という自分中心、極端な利己的考えに基づく」と非難した自民党の武藤貴也衆院議員の発言がありました。
   そして、「国民の理解がすすんでいない」としながら強行採決を行う安倍首相の姿勢があります。戦後70年、日本の民主主義は「存立危機事態」にあります。このことは、日本社会の安全保障の最大の課題ではないでしょうか。平和と民主主義、主権者に対する権力の大きな挑戦なのではないでしょうか。

   戦後の日本を見続けてきたジョン・ダワー、マサチューセッツ工科大学名誉教授は、インタビューに答えて、
   「国際的な平和維持に貢献すると言いつつ、念頭にあるのは米軍との更なる協力でしょう。米国は軍事政策が圧倒的影響力を持っている特殊な国であり、核兵器も持っている。そんな国とつながるのが果たして普通なのでしょうか。」として、集団的自衛権行使を容認して戦争のできる「普通の国」を求める安倍政権を批判しています。

   戦後70年、原水禁結成50年、私たちは危機の中にあります。歴史に学び、そして運動に学び、そしてヒバクシャの、フクシマの思い共有し、
   「精神的原子の連鎖反応は、物質的原子の連鎖反応に勝たねばならぬ」とした森滝市郎原水禁初代議長の言葉を基本に、反核・反原発、戦争反対の「思い」をしっかりと胸に刻み、多くの人々とのつながりを基本に、力強く次の一歩を踏み出そうではありませんか。

原水禁世界大会・長崎大会に1800人 被爆70年-再び過ちを繰り返さないために戦争法案を許さない

2015年08月07日


長崎開会総会 

   被爆70周年原水爆禁止世界大会は、広島大会を引き継ぎ、8月7 日から長崎大会が始まりました。長崎ブリックホールで開かれた開会総会には1800人が参加し、原爆投下をもたらした日本が戦争へ歩んだ過ちを安倍内閣のもとで再び繰り返す動きを強めていていることに強い怒りと断じて阻止しようとの声が相次ぎました。
   オープニングは核廃絶を願って、長崎県内386キロをめぐった「反核平和の火リレー」の皆さんによる取り組みが紹介されました。
   黙とうに続いて、上川剛史・長崎実行委員長(長崎県原水禁会長)が戦争法案阻止を強く訴える開会あいさつを述べました。主催者あいさつは、長崎原爆の被爆者でもある川野浩一・大会実行委員長(原水禁議長)が行い、自らの被爆の経験を語った上で、日本の今後にとって重要な時期での原水禁大会として討議を深め核兵器廃絶と戦争法案廃案のとりくみを築いていくことを訴えました。
   海外ゲストを代表して、ドイツ連邦議会議員であり、緑の党のベーベル・ヘーンさんが、東日本大震災による東電福島第一原発事故に触れ、その被害と日本政府の問題点を指摘するとともに、戦争反対や脱原発のとりくみが広がっていることを高く評価しました。また、事故の教訓として、「安全な原発はない」「原子力利用は常に核兵器開発の第1段階」「核廃棄物処理の解決方法はない」などを指摘しました。その上で、再生可能エネルギーについてのドイツのとりくみを紹介するとともに、平和を築くものであり、核廃絶を強く訴えました。
   藤本泰成・大会事務局長が基調提案。広島での式典で安倍首相が非核3原則に言及しなかったことを強く批判、歴史に学ばず平和への信念を持たない政権は退陣してもらいたいと強調しました。
   続いて、特別企画として講談師の神田香織さんが「福島の祈り」の演題で講談。それを受けて福島からの訴えを、福島県平和フォーラムの瀬戸禎子・事務局次長が行いました。
   長崎からのメッセージでは、田上富久・長崎市長、被爆体験者の岩永千代子さんと米田フサエさん、第18代高校生国連平和大使と高校生1万人署名活動実行委員会の代表60人余りが登壇し、8月16日からの国連欧州本部訪問などの抱負を語り、また、運動の継承への決意も表明されました。
   最後に「原爆を許すまじ」を全員で合唱し、開会総会を終えました。長崎大会は8日に分科会などが開かれ、9日に大会全体の閉会総会で大会宣言が採択されます。

被爆70周年原水禁世界大会・広島大会/ヒロシマアピール

2015年08月06日

   訴えます、「核と人類は共存できない」 無くそう核兵器、めざそう脱原発の安心社会を

   1945年8月6日午前8時15分、広島に投下された原子爆弾は「熱線]、「爆風」、「放射線」のもと、その年の内に14万人もの生命を奪い去りました.あの日から70年、「核戦争起こすな、核兵器なくせ」「ふたたび被爆者をつくるな」「ヒロシマ・ナガサキを世界のどこにも繰り返えさせるな」と、被爆者は声の出るかぎりに訴え続けてきました。しかし被爆者は高齢化し、残された時間で、戦争、被爆を知らない世代との連携によって体験の継承、核廃絶に向けた運動を継続していくことが求められています。私たちは、被爆者たちが訴え続けているその声を「継承」していかなければなりません。

   世界には、未だ約15,800発の核弾頭が存在しています。今年4~5月に開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議は、「核兵器の非人道性」が訴えられ、早期の「核兵器禁止条約」成立に関して議論がなされましたが、核兵器保有国の政治的な思惑によって合意文書すら採択に至らず会議の形骸化が懸念されます。日本政府に、唯一の戦争被爆国として核保有国と非核保有国の間に立って、核兵器廃絶へ向けた議論をリードしていく責任を認識させなければなりません。

   安倍政権が進める原子力政策では、福島原発事故の反省もなく、国民世論の6割以上が脱原発を求めているにもかかわらず、原発推進政策を打ち出し、強行に進めています。また、破綻している核燃料サイクル計画に固執し、大量のプルトニウムを保有しています。プルトニウムは、核兵器の原材料となることから周辺諸国に脅威を与え、東北アジア非核地帯化の実現に大きな障害になっています。プルトニウム利用政策は、核兵器問題と結びついており、東北アジアの平和と安定に向け即座に止めさせましょう。

   原子力規制員会の「新規制基準」により川内、高浜、伊方原発を審査合格として原発再稼働を強硬に推し進めています。一方で、高浜原発は、福井地裁から新基準に適合しても「安全性は確保できない」として再稼働の差し止めを認め、審査適合は安全ということではないことが明らかになりました。私たちは、あらゆる「まやかし」に騙されることなく全ての原発の廃炉を求め、さらに運動を強化しましょう。
   東日本大震災による福島第一原発の事故から4年が経過しますが、現在も11万人を超える福島県民が未だに避難生活を余儀なくされ、長期に渡る避難生活は、暮らしや健康、就労等多くの不安と負担を与え続けています、しかし、自民党は、避難者への慰謝料や商工業者への損害賠償を終了させようとしており、全てをなかったものにしようとしています。国の責任「国家補償」の精神に基づく健康と生活の保障を求めていく取り組みを強化しましょう。

   安倍政権は、違憲の安全保障関連法制を国会での数の力で成立させ、戦争ができる国にしようとしています。現在、国会前抗議行動とともに全国から抗議の声が上がり日増しにその声は強くなっています。戦争により何が起こったのか、被爆地ヒロシマで体験した私たちは、9条を守り憲法を守り一切の戦争を否定し、二度と悲劇が繰り返されないよう訴え行動していきましょう。

   これまで原水禁を結成し50年にわたり、一貫して「核と人類は共存できない」、「核絶対否定」を訴え続け、核のない社会・世界をめざして取り組んできました。現在、暴走し続ける安倍政権の戦争への道、原発再稼働への道に対抗していくことが喫緊の課題であり、将来ある子どもたちに核も戦争もない平和な社会を届ける取り組みを全力で進めます。

○すべての核兵器をなくし、核と戦争のない21世紀をつくろう!
○核兵器禁止条約を実現しよう!
○東北アジアの非核兵器地帯条約を実現しよう!
○フクシマを繰り返すことなく、全ての原発の再稼働に反対し脱原発社会をめざそう!
○原発の輸出を止めよう!
○原発事故の被災者と被曝労働者の健康と命と生活の保障を政府に強く求めよう!
○非核三原則の法制化を実現しよう!
○平和憲法を守り、憲法違反の安全保障関連法案の廃案をめざそう!
○ヒバクシャ援護施策の強化ですべてのヒバクシャ支援を実現しよう!
   ノーモアヒロシマ、ノーモアナガサキ、ノーモア フクシマ、ノーモアヒバクシャ
            2015年8月6日
                                                被爆70周年原水爆禁止世界大会・広島大会

原水禁大会・広島大会2日目 分科会・ひろばや国際会議で討論

2015年08月05日

広島分科会・国際会議・ひろば

   被爆70周年原水爆禁止世界大会・広島大会は8月5日の2日目に、分科会・ひろばや国際会議、子どものひろばなど、多彩な取り組みが行われ、参加者は改めて核廃絶の決意を新たにしました。
   分科会は「脱原子力」「平和と核軍縮」「ヒバクシャを生まない世界に」「見て、聞いて、学ぼうヒロシマ」などの課題別に7つ開催されました、脱原子力の課題では、福島原発事故を受けて、原発再稼働問題や、原発に頼らないエネルギー政策をめざした運動について討議。明治大学名誉教授の藤井石根さんは、脱原発に備え緊要なエネルギー政策の見直しを訴え、原子力資料情報室の伴英幸共同代表は、福島原発事故と脱原発社会の選択について提起しました。
   平和と核軍縮では、「核情報」主宰の田窪雅文さんがNPTで問われるプルトニウム保有で日本の六ヶ所再処理工場について指摘。ピースデポの湯浅一郎副代表は東北アジア非核兵器チタ院実現に向けて包括的なアプローチを提起しました。
   この他、午後には「国際会議」や関係団体の自主企画による「ひろば」が行われ、1日がかりのフィールドワークなどとあわせて多彩な取り組みが行われました。

 

広島大会第7分科会「見て、聞いて、学ぼうヒロシマ-入門編」

2015年08月05日

広島第7分科会

会場: 広島市西区民文化センター2Fホール
参加者:  281人(うち原水禁広島大会初参加者がほとんど)

   第7分科会では、はじめにビデオ「君たちはゲンバクを見たか」を上映し、70年前ヒロシマで起きたことを改めて映像で知るとともに、被爆の現実を学んだ。ビデオでは思わず目を背けたくなるような被害の事実を、身をもって知るとともに、被害の大きさを改めて確認することとなった。ビデオの中で被爆者の方々が被爆の悲惨さとともに、この事実を風化させず語り継いでいくこと、二度と同じ過ちを繰り返してはならないことなど、切実な思いが語られていた。
   続いて被爆証言として広島市南区にお住まいの桑原千代子さんから被爆体験をお話しいただいた。
   桑原さんは13歳の時、爆心地から約800m離れた雑魚場町で学徒動員令による建物疎開(解体作業)従事中に被爆した。被爆直後の真っ暗な中を、同級生たちと明かりを求めて逃げさまよったこと、自分も身体の左側をヤケドし、頭と腕の皮膚をぶら下げながら歩き回ったこと、一緒に逃げた仲間が途中で動けなくなり、泣く泣く置いていったことなどを涙ながらに語っていただいた。
   ご高齢にもかかわらず、また辛い体験を必至に伝えようとの思いが伝わり、桑原さんのお話に多くの参加者が真剣なまなざしで聞き入った。
   次に報告として山戸友吏子さんより「折り鶴-忘れないためにできること」として山戸さんのこれまでの活動の報告がされた。山戸さんは尾道市で保育士をしており、子どもたちとともにつくる平和学習として、子どもたちと一緒にピースリボンを持って平和の日リレーへの参加や絵本づくりなど、大人からの押しつけでない「本当の意味での平和学習とは何か」という大切な課題を提起された。
   戦争体験のない私たちができること、それぞれの立場で、それぞれの生き方でできることがあることを改めて学ぶ機会となった。
   残念ながら会場からの発言はなかったが、比較的若い参加者も多く、次の世代に悲惨な被爆体験や戦争の事実を引き継いでゆくことの大切さを学ぶことができた。

広島大会第5分科会「ヒバクシャを生まない世界に1-世界のヒバクシャの現状と連帯のために」

2015年08月05日

広島第5分科会

報告:静岡 鈴井孝雄

講師 豊崎博光(フォトジャーナリスト)
海外ゲスト ロラン・オルダム(ポリネシア)
コメンテーター兼通訳  真下俊樹(神戸市外国語大学講師)
運営委員 鈴井孝雄(静岡)

参加者 約70名 初参加 約20名

豊崎博光 氏
   第5福竜丸のビキニ事件も区別が差別になった。マグロは放射能に汚染されていないか調べられたが、船員は測っていない。2万人が被爆しているが、被爆者となっていない。沖縄海域も汚染され被爆者でありながら切り捨てられた。米国でもロシアでも兵士が被爆している。中国の兵士も被ばくしていると思われるが不明である。ウラン鉱石の採掘でも19か国で先住民が従事し被爆している。ネバダ核実験場では、1951年から数多くの核実験が行われてきたが風向きが北ないし北東の場合に実験を行っている。それは南にラスベガスがあり、西にはロサンゼルスがあるからだ。風下の先住民は被爆させられた。核被害は見えない暴力である。
   在米被爆者は100万人もいて、被爆者大国である。1987年ニューヨークで第1回核被害者世界大会、1992年ベルリンで第2回核被害者大会が開かれ先住民もこの大会に参加した。
   被ばくには外部被ばくと内部被ばくがあり、さらに性差による被害の差、大人と子供でも違う。ビキニ核実験から地球規模の被爆が広がっている。チェルノブイリで欧州全域が、福島原発事故で日本はどこに行っても汚染されている。マーシャル諸島は、海水面の上昇でも被害を受けている。

真下俊樹 氏 コメント
   フランスはポリネシアを植民地とした。ドゴールは、米国とソ連とは別のドゴール主義を掲げ仏の核開発を積極的に行った。およそ日本の半分の人口とGDPで核保有国とするために原子力で稼ぐ政治方針を持っている。仏の電力の4分の3は原発による。再処理プラントも仏が開発しており、六ヶ所の施設も仏からの輸入である。仏はサハラ砂漠で核実験を行っていたが1964年アルジェリアが独立したことによって66年からポリネシアで大気圏核実験を行うようになった。合計210回行っている。タヒチとポリネシアの間は、約1200㎞、広島型の30~170倍の実験を8回行っている。その結果、核被害者も本国で53,000人、地元労働者1000人が被ばくしている。2000年代になって被害者団体が発足し、2009年に被害者の存在を認め補償する法律ができたが、厳しい適用基準によって15万人中数100人しか適用されていない。

ロラン・オルダム 氏(核実験被害者の会代表)
   仏領ポリネシアの実験場で実験された核爆弾は、実戦用の核兵器が使われている。被爆の問題は、腐敗の政治の問題でもある。仏の核は安全で害はない、と言い続けてきた。張本人は、ドゴールとシラクの二人である。教会や市民は真実から目を背けることによって認めている。先住民は、これに立ち向かった。
   環境への影響も大きい。ムルロア環礁がいつ崩れても
   会の設立は2001年で、真実を明らかにし被害者の権利確立のためである。4649人の会員がおり、3822人が元労働者、121人が遺族、31人が支援者である。2010年、核実験被害者支援法が成立し、核の危険性を認めることとなったが、900人が申請し、補償されたのは16人でしかなく、骨抜きとなっている。ポリネシア人は4~5人である。一人500~600万円支払われるというが、手元には10年かかって200万円位しか受け取れない。
   今後どうするか、であるが記念碑を建てた。政府にとっては邪魔者で撤去しようとしているが撤去計画反対のデモが起きている。今後地域での運動と国際的な運動の二つの側面から取り組んでいく。地域では「核の事実」と言った副読本を作成し、採用を迫っている。次は住民投票を実現したい。市民から見て核実験はどうなのか問い、嘘を問い直したい。原水禁は世界のヒバクシャ支援に大きな力を発揮してくれた。これからも国際的連帯を強めていってほしい。タヒチで核実験50年、記念碑建立10年の記念集会を持つ。原水禁から是非、代表を送ってほしい。国際連帯は非常に重要である。何の支援も受けられていない被爆者がまだまだたくさんいる。

会場からの質問、意見
脱原発播磨アクション
Q-1 アイヌにも被爆者がいるのか?
Q-2 副読本の配布は可能なのか?
Q-3 投票率は高いのか?
A-1 被爆者ではないが泊原発の問題もあり少数民族として参加していた。
A-2 自由に配布はできないが、政府は市民のためにある、と作り変えねばならない。認めさせるように迫っている。
A-3 補償法は、議員に圧力をかけた結果、できた。法律を変えるために使いたい。
福岡
Q-1 副読本は学校教育の中でどのように扱われているか?
A-1 学校での使用は皆無。国賊扱い。仏核実験は1ページのみ。
大阪
意見 福一で日本は核加害国になった。ロラン・オルダムさんの地域と国際連帯の提起に感銘した。緊急時の被ばく線量引き上げに反対してほしい。
長澤
被ばくを許さない集いPt-16への参加を。

広島大会第4分科会「平和と核軍縮2-沖縄と東北アジアの非核化への課題」

2015年08月05日

広島第4分科会

参加人数93人(うち初参加16人)

   湯浅一郎さん(ピース・デポ副代表)が「沖縄と東北アジアの非核化-非核兵器地帯を柱に包括的なアプローチ-」と題して講演した。
   湯浅さんは、「安倍政権の安保・軍事政策は、東北アジアの安全保障ジレンマの悪循環を拡大・深刻化させているだけであり、必要なことはその逆である。追い込まれているのは安倍政権だ。安保法制(戦争関連法案)を廃案に追い込むこと、そのことを通して、安倍政権の支持率を下げていくことが短期的な取り組みとして重要である。中期的には、「憲法9条が大事である」と言っているだけではダメで、外交政策に具体化していく取り組みや世論を構築していくことが重要で、その切り口として「北東アジア非核兵器地帯」を作るという課題がある。3(日本・韓国・北朝鮮)+3(米国・ロシア・中国)による軍事力によらない安全保障の枠組みとしての「北東アジア非核兵器地帯」の構想こそ現実的なアプローチである」と指摘した。
   続いて、海外ゲストのポール・マーチンさん(アメリカ・ピースアクション)が「2015の核拡散防止禁止条約(NTP)再検討会議では最終文書の採択はできず、状況を進展させることはできなかった。核廃絶という目標に達するにあたり核保有国間の緊張や自国の軍縮課題があげられるが、私たちが最後に直面する課題は、核戦争の恐怖や脅威が忘れられてしまうことだ。今日の若い指導者は、核戦争に関する教育やその影響に対する直感、そして核戦争を恐れる気持ちがかけている。この問題に関する教育を続けることが必要だ。」と訴えた。
   次に、海外ゲストのイ・キョンジュさん(韓国・参与連帯)が、「日本は核兵器を保有していないが、再処理の施設を持っていて45万トンにおよぶプルトニウムを保有している。日本では首相が「核兵器を作る技術は持っているが開発はしない。輸出の技術もあるが輸出もしない。これが積極的平和主義である。」と言っているが、潜在的な能力を持っていることが、海外や特に隣国では懸念されている。北朝鮮と日本に挟まれている韓国では核主権論という話もでてきている。こういった核の悪循環、ジレンマを東北アジアから払拭しなければならない。」と述べた。
   各地からの報告では、沖縄県から、辺野古新基地建設阻止、沖縄の基地撤去のたたかいについて、県内の取組み報告、神奈川県からは、7月30日に東京高裁で判決のあった厚木基地の爆音訴訟の内容、米海軍横須賀基地の空母交替・基地強化の問題について報告があった。
   また、質疑の時間は余り確保できなかったが、参加者2名から行動報告等が行われた。

(報告=全農林 二宮)

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