2016年11月

原子力規制委員会の美浜原発3号機の運転延長認可に対する抗議声明

2016年11月18日

原子力規制委員会の美浜原発3号機の運転延長認可に対する抗議声明

   原子力規制委員会(田中俊一委員長)は、今月16日、運転開始からまもなく40年が経過する関西電力・美浜原発3号機の運転延長を認可しました。先の関西電力・高浜原発1、2号機に続くもので、老朽化した原発のさらなる運転延長は、多くの専門家が指摘するように安全面からも問題が多く、市民社会の多数が求める脱原発の願いも蔑ろにするものです。

   「40年ルール」は、旧民主党政権下において与野党で合意した、原発稼働を「原則40年」とするもので、延長はもともと「極めて例外」として位置づけられていました。しかし、高浜原発に続く今回の延長は「極めて例外」を、「常態化」することに道を開くものです。老朽化した原発の安全性が、今回の審査で担保されたわけでもなく、機器の老朽化とともに未知なる事態が発生するリスクは高くなるだけです。

   美浜3号機は、2004年8月9日、経年劣化で薄くなった冷却水配管が破裂したことで高温高圧の蒸気が噴出し、作業中だった協力会社作業員11人が死傷する蒸気噴出事故を起こしています。延長によってさらに機器の老朽化が進み、予測ができない事故を再び起こさないとも限りません。

   さらに、老朽化した原発では、機器の点検・修理も増え、それに伴い労働者の被曝量を増大させます。廃炉を決定した原発がある中で、今回の判断は経営優先・経済効果優先の市民の安全を無視した暴挙とも言えるでしょう。

   原発を動かし続け、放射性廃棄物を生み出し続けることは、廃棄物の処理、処分、費用負担など様々な問題の解決の道も全く示されない中で、無責任極まりなく、将来の日本社会に現在のつけを回すという、決して許されないものです。

   福島第一原発事故から5年8ヶ月が過ぎ、事故原因の究明すらされておらず、事故収束の道筋も明確ではありません。被災者はいまなお苦しい避難生活を強いられています。原発周辺の住民に示されるべき防災計画・避難計画も不十分で、巨大地震や津波に対する安全性も市民社会が十分に納得できるものとなっていません。市民社会の多くの声を無視して、政府や電力会社は、原発の再稼働そして原発運転延長と、原子力発電推進に大きく傾いています。このことは、過酷事故の可能性を残し、放射性廃棄物をさらに増大させ、日本社会の将来に大きな禍根を残すものとなります。

   原水禁は、老朽化した原発に対して多額の費用を投下し、安全性を無視した運転延長をはかることに反対し、今回の美浜原発3号機の運転延長の決定に強く抗議します。

2016年11月18日

原水爆禁止日本国民会議

議長 川野 浩一

日印原子力協定署名に対する抗議声明

2016年11月12日

日印原子力協定署名に対する抗議声明

2016年11月12日

原水爆禁止日本国民会議

議長 川野浩一

   11月11日、安倍晋三首相とインドのモディ首相は、日本からインドに原発輸出を可能にする「日印原子力協定」に署名した。原水禁は、核軍縮・核不拡散および原子力エネルギー政策の観点から、強く反対し、抗議する。

   インドは、核不拡散条約(NPT)に加盟せず、核兵器を開発・保有してきた。「核兵器の先制不使用」に関しても、パリカル国防省は「縛られない」と発言している。核実験を行い、世界の趨勢である核不拡散に賛同しない国と、唯一の戦争被爆国として非核三原則を国是として核兵器廃絶を訴えてきた日本が「原子力協定」を結ぶべきではない。核不拡散を担保するインドが核実験を行うならば協力を停止するとの条件は、協定には明記されず関連文書とされた。核不拡散を確保するならば、協定そのものに明確に「核実験があれば協定は破棄される」と記載すべきである。日本は10月27日、123カ国の賛成で採択された「核兵器禁止条約」の交渉開始を求める国連決議に反対した。「日印原子力協定」の調印と併せて、日本の核兵器廃絶の訴えは、全く説得力を欠くものといわざるを得ない。

   一方、日本は、東京電力福島第一原子力発電所において、歴史的な過酷事故を起こした。その原発事故は収束の目途が立たず、避難者は未だ9万人ともいわれている。米国の原子力メーカーウェスチングハウスを買収している東芝など原発メーカーは、「日印原子力協定」によって、インドへの原発輸出の道が開けたと歓迎している。しかし、原発事故を起こした日本が、原発を輸出することの意味を問い直すべきではないか。百歩譲っても福島原発事故の収束が先であると考える。インドでは、ボパールの化学工場爆発事故を契機にメーカーの賠償責任も問われるようになった2010年には原子力賠償法が成立している。福島原発事故のような過酷事故になれば、最終的にその賠償を含めたリスクは日本国民に跳ね返ってくるだろう。経済優先の原子力協定は、日本の将来に大きな禍根を残すであろう。

   原水禁は、人類と核は共存できないとして、核兵器にも原子力発電にも反対し続けてきた。今や、日本社会の核兵器廃絶・脱原発の声は、市民社会を圧倒している。将来に禍根を残すことのないよう、原水禁は、今後も粘り強くとりくみをすすめていく。

TOPに戻る