2017年7月

原水禁世界大会・福島大会から東京電力に対する申し入れ文

2017年07月31日

東京電力株式会社
  社長 小早川 智明 様
  

被爆72周年原水爆禁止世界大会実行委員会
実行委員長 川野 浩一

 
申し入れ

 2011年3月11日の東京電力福島第一原発事故は、暮らしと文化、そして夢までも奪い去り、世代を超えた健康影響に対する不安を与えました。こうした事態を招いた責任は厳しく問われなければなりません。事故から6年半が過ぎようとしていますが、事故の収束はいまだ先が見えない状況にあります。先日、ロボットを投入して、3号機の一部デブリの画像撮影に成功したことが発表されましたが。それで炉内の全体像がつかめた訳でもなく、高線量の中にある燃料デブリの取り出しにはさらに大きな困難が待っています。
 また、廃炉費用は、21.5兆円との試算が発表(2017年)されましたが、当初見積もり11兆円(2013年)の倍となり、さらに今後2倍、3倍と膨れあがっていく懸念があります。さらに21.5兆円のうち貴社負担分は16.5兆円となります。試算を前提に向こう30年間でこれを負担すると、毎年5千億円の負担となり、毎年これ以上の利益をださなければ負担できない金額です。2015年3月の純利益は4550億円、2016年3月は1407億円たなっており、すでに貴社での負担は不意可能のようにも映ります。このような状態で本当に廃炉作業が貴社で責任を持って取り組めるのでしょうか。事故のツケは、被災者を含め私たちに押しつけられるのでしょうか。
 それでも貴社は、「原発のない福島」を求める県民の強い要求にもかかわらず、福島第二原発の廃炉に応じずいます。原発再稼働に固執する姿から福島原発事故に対する真摯に責任を取ろうする姿勢を感じることはできません。さらに溜まり続ける汚染水を海洋への放出をしようとする意向が報道されましたが、風評被害に苦しむ生産者・漁業者にとって追い打ちをかける動きです。被災者にとっては、これ以上環境を汚染することは耐えられるものではありません。責任を持った対応を強く求めます。
 現在、貴社は、事故の収束に向けて作業を進めていますが、高い放射線が収束作業を阻み、トラブルも相次いでいます。トラブルの原因の多くは、予算削減、設計簡素化、工期短縮、行き当たりばったりの対応・対策などコストを優先した対応、とも言われています。いま必要なことは、原発の再稼働よりも一日も早く事故を収束させ安心・安全な福島にもどすことです。そのためにはコストを度外視してでも、事故の収束に全力をあげるべきです。
 さらに長期にわたる事故の収束には、作業員の確保が欠かせません。現在の多重下請け構造、ピンハネ構造、そして不安定雇用の下では、安定した作業員の確保と育成は難しくなるばかりです。さらに各地で原発再稼働、定期点検などが始まれば、専門の作業員さえ確保することが難しくなるはずです。待遇改善と多重下請け構造の解消を強く求めます。
 8万人近くの県民がいまだに避難生活を余儀なくされています。長期に渡る避難生活は、被災者の暮らしや健康、就労など、多くの不安と負担を与え続けています。さらに事故によって被災者の基本的人権も様々な形で侵害されています。一方で、「除染作業」終了とともに避難指示解除準備地域および居住制限区域について順次避難指示を解除しようとしています。すでに「自力(自主)避難者」への住宅の無償提供、商工業者への営業損害補償などは今年3月に打ち切られています。私たちは、福島原発事故の被害が終わったかのような意図的な原発事故の幕引きを許すことはできません。貴社に対し誠意ある対応を強く求めます。
 さらに労働者の被曝線量の大幅引き上げ(100mSvから250mSvへ)がなされました。それに準じ貴社も緊急時被曝線量を引き上げ、下請け労働者に大量の被曝を強いることは許せません。「命」よりも「経済」を優先し、被曝を前提とした原発再稼働など論外でしかありません。フクシマを繰り返さないためにも、被爆72周年原水爆禁止世界大会・福島大会参加者の総意として、以下の点を申し入れ、誠意ある回答をお願いいたします。
 
 
 
1.事故の収束に全力をあげてください。
2.福島第二原発及び柏崎刈羽原発の再稼働をやめ、速やかに廃炉にしてください。
3.被災者への補償の打ち切りをやめてください。
4.汚染水の海洋放出をやめてください。
5.健康被害に真摯に対応してください。
6.多重下請け構造とピンハネ構造の改善を図り、労働者全体の待遇改善や被曝線量の低減を図ってください。
7.事故の収束及び放射性廃棄物の処理・処分計画のロードマップを明らかにしてください。
 
以 上

被爆72周年原水爆禁止世界大会・福島大会開かれる

2017年07月30日

福島大会.JPG

 今年も原水爆禁止世界大会が福島から始まりました。2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原発事故から6年が過ぎましたが、廃炉作業の目途も立たず、いまだ8万人近くの人々が避難生活を余儀なくされています。さらに補償や健康、地域社会の復興など様々な課題が山積しています。福島大会は、そうした現状を明らかにし、脱原発への課題を検討しました。
 7月29日、福島市の「県教育会館」に、県内や東北各県をはじめ、全国から720人が参加。主催者挨拶に立った大会副実行委員長の西尾漠さん(原子力資料情報室共同代表)は「安倍政権は原発事故など無かったかのように再稼働を全国区で進めている。しかし、福島の現実はますます深刻になっている。今大会は初めて分科会を設け、徹底的に議論し、理解を深めよう」と呼びかけました。
 福島県平和フォーラムの角田政志代表が地元を代表して挨拶し、「今年3月に一部で避難指示の解除がされたが、被災者の生活再建は大きな問題だ。国や県は責任を持って被災者に向き合うべきだ」と訴え、さらに、福島第二原発の廃炉に向けた運動も紹介しました。
 大会の基調を藤本泰成・大会事務局長(原水禁事務局長)が行い、国連での「核兵器禁止条約」の採択など核を巡る情勢とともに、福島原発事故を受けて脱原発社会の実現に向けた課題を提起しました。膨らむ事故処理費用や、避難者の帰還の強要、子どもの甲状腺がんなど、被ばくが疑われる現実を直視し、国や東京電力の責任を明らかにして、エネルギー政策の転換に向けた運動の重要性を指摘。「被災者一人一人に寄り添った復興を求めていこう」と強調しました。
 福島からの訴えを、原発建設当初から反対運動を続けてきた「双葉地方原発反対同盟」の石丸小四郎代表が行い、「今でも毎時1000万ベクレルの放射能が発生し、福島だけでなく近県にも大量の放射能が存在している。89万トンもの汚染水タンクが林立、凍土遮蔽壁は失敗し、海の汚染も広がっている」など、「事故は未だ終わっていない」現実をあげ、「二度とこうしたことのないようすべきだ」と語気を強めました。
 一方、高校生平和大使からの訴えでは、今年の平和大使に選ばれた福島市の高橋伶奈さんと伊達市の高橋花音さんが「震災は止めることが出来ないが、核兵器は廃絶することは可能だ。平和大使としてしっかり訴えてきたい」と力強く語りました。
 「福島原発事故の責任と原発再稼働をめぐる司法の現状と課題」と題して、弁護士で脱原発弁護団全国連絡会共同代表の海渡雄一さんが講演を行い、各地で行われている原発の稼働停止を求める運動などを説明し、「仮処分申し立てで勝てば、原発再稼働は止められる。事故を防ぐことは司法の責任になった。政府の司法への介入を許さない市民の決意が求められている」と訴えました。
 全体集会の最後に「フクシマの悲劇を二度と繰り返さないためにも、『福島には原発はいらない!』の声を大きくし、全国の原発再稼働反対の運動につなげていきましょう」とのアピールを採択しました。

第2分科会.JPG第1分科会.JPG第3分科会.JPG

 その後、3つの課題で分科会を行い、福島県内の関係者が問題提起を行い、専門家の助言を交えて意見交換がされました。第1分科会の「健康と甲状腺がんの問題」では、「県民健康調査における小児甲状腺検査」が報告され、事故との因果関係が議論されました(上写真中)。第二分科会は「避難解除による帰還と生活再建の問題」が語られ、紙芝居を交えながら、避難者の現状が語られました(同上)。第三分科会は「放射性廃棄物の処理問題」をテーマに、除染による除去土壌の処理の実態や課題が述べられました(同下)。各分科会とも参加者から活発な質問や意見が出されました。

飯舘村.JPG川俣町.JPG
 翌30日にはフィールドワークが行われ、川俣町山木屋地区や飯舘村を訪れ、避難指示解除となった地区や、未だ帰還困難区域となっている周辺の被害の実態、除染廃棄物の仮置き場、仮設焼却炉施設などを視察しました。写真上は今も立ち入りが制限されている飯舘村長泥地区。今回初めてゲートの中にバスに乗車したままですが、入ることができました。ゲートから先は福島第一原発方面が大きく開け、地形の関係で非常に高く汚染されたことが推測されます。今なお、立ち入りは4時間以内と制限されています。ゲート前の側溝付近では毎時4~6ミリシーベルト数値が測定され、参加者から驚きの声が上がりました。写真下は川俣町山木屋地区。除染作業によって発生した汚染土壌や草木等の廃棄物が詰められたフレコンバッグの置き場は、フェンスによって囲われていました。
 原水禁世界大会は、8月4日から広島大会、7日から長崎大会に引き継がれます。

福島大会「フクシマアピール」はこちら

7月31日に福島大会が東京電力に対して行った申し入れ文はこちら

 

被爆72周年原水爆禁止世界大会・福島大会「フクシマアピール」

2017年07月29日

 フクシマアピール

 東電福島原発の過酷事故から6年4か月が過ぎました。福島第一原発では収束作業が続けられていますが、課題は山積し、廃炉作業についても困難を極めています。今もロボットを投入して格納容器内の燃料デブリの状況調査が行われていますが、今年2月に行われた1・2号機の調査では、ロボットも動かなくなるほどの高線量で、状況は明らかになりませんでした。また、汚染水対策の凍土遮水壁も、十分に凍らない部分と、凍りすぎて地盤が膨張する部分が出るなど、様々な問題が出ています。さらにトリチウム汚染水の「海洋放出」が浮上し、漁業関係者を中心に抗議の声が上がっています。
 一旦ばらまかれた放射性物質の完全回収は不可能です。除染廃棄物及び特定廃棄物の処理処分についても様々な問題を抱えています。核廃棄物の処分については、国は具体的方針を明確にすることができません。
 昨年、高速増殖炉もんじゅの廃炉が決まりました。一方で国は、核燃料サイクルを捨てきれないでいますが、もう展望はありません。
 いま世界では、福島の原発事故を重大な問題としてとらえ、脱原発にエネルギー政策を転換する国が増えています。原発災害の引き起こした過酷な事実と、6年以上が経過しても元に戻せない福島の現実を直視し、原発のない社会の実現を展望した運動を進めなければなりません。
 福島では、福島第一原発の事故収束に全力をあげること、そして、福島第二原発全基を即時廃炉にすることを県民の総意として、「東電福島第二原発の即時廃炉を求める署名」に取り組んできました。第二原発の廃炉は、国と東電の被災者及び県民に対する償いであり、原発事故の責任を明らかにさせることにつながります。第二原発の廃炉は、国に原子力政策の転換を示させる重大な意義を持ちます。そして、第二原発を廃炉に追い込むことは、日本の原発の再稼働を止め、さらには、廃炉に向かう原発を増やすことにつながる重要な運動です。
 フクシマの悲劇を二度と繰り返さないためにも、「福島には原発はいらない!」その声を大きくし、全国の原発の再稼働反対の運動につなげていきましょう。
 「核と人類は共存できない」ことを原点に、原発も核も戦争もない平和な社会の実現に向けた運動を、全国の仲間と共に進めましょう。

 2017年7月29日
被爆72周年原水爆禁止世界大会 福島大会

核兵器禁止条約の採択を受けての声明

2017年07月10日

 核兵器禁止条約の採択を受けての声明

             2017年7月10日
             原水爆禁止日本国民会議
             議  長 川野浩一
事務局長 藤本泰成

 国連本部で開催された核兵器禁止条約の交渉会議で7月7日、122ヵ国の圧倒的な賛成により核兵器禁止条約が採択されました。国連の場でこの条約が出来るまで70年以上の時間がかかったという事実が、核廃絶の難しさを現しています。9月20日から署名が開始されれば、発効基準が50ヵ国の参加なので間もなく、核兵器時代を終わらせるための原則、約束、仕組みをこの条約が提供することになります。
 ここに至るまでの、声をあげたヒバクシャ、世界の市民運動、中小国の外交官の粘り強いとりくみを思うと、故森瀧市郎さんが核実験抗議の座り込みをしていた時に、座っていることが何の役に立つのかという少女の問いかけにあって考え至ったという言葉、「精神的原子の連鎖反応が物質的原子の連鎖反応にかたねばならぬ」が思い起こされます。人道性を追及する人々の精神の連鎖反応が、ついにこの条約にまでたどり着きました。条約のはじまりに、「国際連合憲章の目的及び原則の実現に貢献することを決意し」という文言があるように、1946年の国連憲章から始まる議論の積み重ねの成果です。
 一方で「唯一の被爆国」日本は、核兵器国と非核兵器国の橋渡しをすると公言しながら、交渉会議に参加しませんでした。この条約の実効性を担保するには、核兵器国の参加が重要です。そのためにも日本政府がまず条約に参加し、各国に対して条約に署名、批准するよう働きかける立場になるべきです。
 さらに、国連での議論に注目するだけでは見えない重大な日本政府の核・原子力政策の問題があります。世界各国へ向けて、核兵器禁止条約の実現を呼びかけるのと同時に、国内で政策をどうするかの現実に向き合わなければなりません。その上での議論の積み重ねを、国連の会議の場に負けない形で日本の国会でも実現させなければなりません。
 おりしも、7月5日、フランスから核兵器90発分以上にあたる736㎏のプルトニウムを乗せた輸送船が日本へ向かいました。日本の原発の使用済核燃料から再処理して取り出されたプルトニウムです。核セキュリティーサミットで公約したプルトニウムなど核兵器物質の最小化に明らかに反する政策を日本はとっています。核弾頭数千発分もの48トンもプルトニウムを保持しながら、来年秋には六ヶ所再処理工場を本格稼働させる予定で、さらに年間8トンもプルトニウムを増産する事態が進められています。
 核の役割縮小にも反対の政策をとっています。日本政府は、核兵器以外の攻撃に対しても核兵器で対抗するオプションを維持することを米国に要請、「先制不使用」政策を検討した米国の足も引っ張りました。
 さらには、核不拡散条約(NPT)に加盟せず、核兵器開発を続けるインドに対しても、日印原子力協定を5月16日に国会で承認しています。
 核と人類は共存できないとして、反核の想いを同じくする世界中の人々と、原水禁は運動を続けて来ました。核兵器禁止条約の実現を歓迎すると共に、原水禁は人道性を求める人々の連鎖反応に希望を新たにし、今こそ、これらの日本の政策を変えていくことに真摯に取り組みます。

【被爆72周年原水爆禁止世界大会日程表】

2017年07月03日

 広島大会日程表

長崎大会日程表

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