2017年8月

被爆72周年原水爆禁止世界大会・大会宣言

2017年08月09日

 被爆72周年原水爆禁止世界大会・大会宣言

 人類の頭上に初めて原爆が投下されて72年がたちました。未曽有の惨禍によって、被爆者は、今日まで、差別や貧困にさらされ、様々な健康被害と闘い、苦しい生活を強いられてきました。しかし、被爆者は、原爆後障害の不安に怯えながらも、辛い身体にむち打って、核兵器の被害の実相とその非人道性を訴え、核廃絶を求めて声をあげ続けてきました。今年7月7日、国連総会で「核兵器禁止条約」が採択され、被爆者の願いが実を結びました。条約は、前文で被爆者や核実験被害者の「受け入れがたい苦痛と被害」に触れながら、核兵器が国際人道・人権法の原則と規則に反するとして、その製造や使用のみならず威嚇の行為なども法的に禁止する画期的なもので、核保有国の論理を許さないものとしています。
 しかし、唯一の戦争被爆国である日本政府は、本来ならば核兵器廃絶に向けて積極的にリーダーシップを発揮する立場にあるにもかかわらず、この条約の交渉に参加せず、いまも条約の批准・発効に反対し続けています。8月6日、広島の平和祈念式典で、安倍首相は「唯一の戦争被爆国として『核兵器のない世界』の実現に向けた歩みを着実に前に進める努力」を口にしながら、核兵器禁止条約には一言も触れませんでした。安倍首相が言いう平和は、政治的ポーズに過ぎません。日本政府(安倍政権)の姿勢は、核兵器廃絶を求めている世界の多くの国々、とりわけ被爆者を失望させるものです。私たちは、日本政府が「核兵器禁止条約」を直ちに批准し、核兵器保有国に対して、戦争被爆国としての言葉で参加を促していくことを強く求めます。
 安倍首相は、広島の平和祈念式典で、「被爆者の方々に対しましては、保健、医療、福祉にわたる総合的な援護施策の充実を行ってまいりました。今後とも、被爆者の方々に寄り添いながら援護施策を着実に推進してまいります」と述べました。しかし、被爆者への国家補償や原爆症の認定、在朝被爆者をはじめとする在外被爆者、被爆体験者、被爆二世・三世の問題などで様々な課題が残されています。原水禁は、国家補償に基づく被爆者援護法の制定を長きにわたりとりくみ、「原爆被爆者援護法」を勝ち取りました。しかし、国家補償は未だ明記されず、政府は、被爆者の具体的要求には何ら答えず、ただ裁判で敗訴したことのみ改善するという消極的姿勢に終始しています。被爆者が高齢化する中にあって、安倍首相は、自らの言葉を、自らが具現化しなくてはなりません。時間との闘いの中で、早期の解決に向けた運動の強化が求められています。
 世界各国は、2011年3月11日の東日本大震災・福島原発事故を契機に、脱原発に舵を切りました。ドイツ・イタリア・スイスなどが脱原発を選択しました。アジアにおいても台湾が脱原発を決定し、韓国でも脱原発をめざす政権が誕生しています。原子力産業は、米原子炉メーカーウェスティングハウスを買収した東芝の破たんに見るように、原発建設など原子力産業の推進が企業の経営破綻をまねく状況が現出しています。一方で福島原発事故の処理費用は、現時点でさえ約22兆円と試算され、原発推進が市場経済の論理にそぐわないものとなっています。
 しかし、安倍政権は、除染が終了し、年間被ばく量20mSvを下回ったとして、避難指示の解除を進め、住民に帰還を強要しています。20mSv/yは、一般公衆の被ばく限度の20倍であり、さらなる被ばくを押しつけながら、原発推進のためにフクシマをなかったものにしようとする姿勢は許せません。安倍政権は、脱原発を求める民意を無視し、福島原発事故被害者を切り捨て、原子力推進政策に邁進し、原発再稼働、核燃料サイクル計画・プルトニウム利用路線の推進、原発輸出などを推し進めています。事故の原因の調査も、責任の所在も曖昧にしたまま、原発推進に舵を切ることを許してはなりません。国策として原発を推進し、津波の想定を見直すことなく、事故を引き起こした東電・国の責任をきびしく追及していかなくてはなりません。
 安倍政権は、安全保障関連法(戦争法)や共謀罪を新設し、憲法改「正」に踏み出そうとしています。沖縄・辺野古や高江では、新基地建設を強行しています。日本中の空をわが物顔に飛ぶオスプレイは、各地で事故が頻発し市民社会に大きな不安を与えています。戦後レジームからの脱却という安倍首相の主張は、憲法の規定する国民主権、平和主義、基本的人権の保障という戦後一貫して私たちが守ろうとしてきた日本社会のあり方を、根本から変えようとするものです。決して許してはなりません。
 脱原発を決定させましょう。核燃料サイクル計画を放棄させましょう。米国の傘の下にあって、核武装を担保しておこうとする日本の核政策を根本から変えましょう。核兵器禁止条約の批准を求めましょう。国の責任を明らかにして、フクシマの支援を確実にしましょう。戦争法・共謀罪廃止、憲法改悪阻止、「命の尊厳」を基本に、地域から大きな声を上げていきましょう。
 ノーモア ヒロシマ、ノーモア ナガサキ、ノーモア フクシマ、ノーモア ヒバクシャ、ノーモア ウォー
 
 2017年8月9日
 被爆72周年原水爆禁止世界大会

原水禁世界大会の最終日は長崎で閉会総会開く

2017年08月09日

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  長崎に原爆が投下された8月9日、被爆72周年原水爆禁止世界大会の最終日を迎え、長崎大会の閉会総会が、長崎県立体育館で開かれました。全国から1600人が参加し、核兵器禁止条約の批准など、当面する課題を確認し、運動を広げていくことを誓いあいました。
 長崎実行委員会を代表し、松田圭治・実行委員長(長崎原水禁議長)があいさつに立ち「国連の核兵器禁止条約採択の原動力は被爆者の思いだった。それにもかかわらず、日本政府がこれに反対することは、唯一の戦争被爆国として許されない」とし、憲法改悪や沖縄への新基地建設、原発政策を進める安倍政権を厳しく批判しました。
 九州各県をつないで毎年行われている「非核平和行進」のタスキが長崎から沖縄に返還された後、タスキを受け取った沖縄平和運動センターの山城博治議長が登壇。沖縄県内の基地建設反対運動の中心を担っていたところ、昨年から5か月余にわたり逮捕・不当勾留されたにも関わらず「沖縄県民は翁長雄志知事を先頭に辺野古に新基地を作らせない闘いを続けている。事態が厳しければ厳しいほど団結していくことが大切だ」とし、自ら作詞した「今こそ立ち上がろう」を熱唱して、会場を沸かせました。
 また、佐賀県唐津市にある玄海原発の再稼働に反対するアピールを、佐賀県原水禁の柳瀬映二事務局長が行い、「県知事は県民の意見を聞くポーズをとっているが、理解は得られていない。避難計画は被ばく計画でしかない。再稼働を絶対に阻止する」と力強く述べました。

 高校生のアピールとして、第20代高校生平和大使と高校生1万人署名活動実行委員会のメンバーなど100人余りが並び、若者として核廃絶を訴えていく決意を語りました(写真上)。
 原水禁世界大会に参加した海外ゲストを代表し、米国ピース・アクション政治政策担当のポール・マーティンさんは「世界の状況は昨年よりも悪くなっている。アメリカと日本では自らの利益だけを考える指導者がいる。ともに連帯し軍国化を進めることを阻止しよう」と呼びかけました。
 大会のまとめを藤本泰成・大会事務局長が行った後、脱原発、核燃料サイクル計画などの日本の核政策を根本から変えることや、核兵器禁止条約の批准、国の責任によるフクシマの支援、戦争法・共謀罪廃止、憲法改悪阻止など、「命の尊厳」を基本に、地域から声を上げていこうとの大会宣言を採択しました。
 事務局長の「大会のまとめ」はこちら
 「大会宣言」はこちら
 
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 集会後、爆心地公園までの非核平和行進(写真上)を行い、核廃絶などをアピール。爆心地公園では原爆中心碑に川野浩一・大会実行委員長などが献花を行った後、原爆投下時間(11時2分)のサイレンを合図に全員で黙とう(写真下)を行い、大会の全日程を終えました。
 
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原水禁世界大会・長崎大会 2日目は分科会やひろばで討議

2017年08月08日

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 8月8日、原水爆禁止世界大会・長崎大会の2日目は。いくつかの課題に分かれての分科会や、関係団体の自主企画の「ひろば」、フィールドワークなどが行われました。
 「平和と核軍縮」の分科会では、共謀罪などの憲法問題や沖縄での新基地建設問題での討議と、7月7日に国連で採択された核兵器禁止条約と東北アジア非核兵器地帯化構想について考えました(写真上)。
 「脱原子力」の課題では、福島原発事故の現状と再稼働問題を考える分科会のほか、プルトニウム利用路線の破たんと自然エネルギーの展望を検討しました(写真下)。

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 「ヒバクシャ」については3つの課題に分かれ、世界各地での核実験やウラン採掘などでの核被害の実態と補償、韓国やメキシコなど在外被爆者を招いて在外被爆者の置かれている現状と課題、さらに、被爆二世・三世問題では現在取り組まれている集団訴訟の意義や展望を考えました(写真上)。
 さらに、「見て・聞いて・学ぼうナガサキ」では、映像や被爆者の証言を通して被爆地・ナガサキの実相に触れました。このほか、被爆者との交流や、映画の上映などの「ひろば」、長崎市内の被爆遺構めぐり(写真下)や、佐世保の基地めぐりのフィールドワークも開かれました。
 さらに、小学生向けの「子ども平和のひろば」、高校生が企画・運営した「ピース・ブリッジinながさき」(写真下)など多彩な内容の催しが行われました。
 8月9日は長崎大会の閉会総会が開かれ、大会宣言を採択した後、爆心地までの非核平和行進を行い、原爆投下時間(11時2分)に黙とうを行い大会の全日程を終えます。

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長崎大会 第1分科会「平和と核軍縮1-核も戦争もない世界を!~憲法・沖縄から考える」

2017年08月08日

長崎大会 第1分科会「平和と核軍縮1-核も戦争もない世界を!~憲法・沖縄から考える」
 
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講師:前田哲男(ジャーナリスト・軍事評論家)
海外ゲスト:ポール・マーチン(米国・ピースアクション)
参加者 220名
 
 はじめに、軍事評論家の前田哲男さんより「安倍政権の危険な本質」と題して講演を受けた。まずオスプレイ墜落と安倍首相の防衛計画大綱の直近情勢に触れたうえで、小野寺大臣の提言について解説があり、北朝鮮のミサイル対策・敵基地反撃能力を保有すべくということは、専守防衛という言葉は形骸化しているとの説明があった。このなかでは、政府の弾道ミサイルに関するホームページを引用し、長崎の地での経験や新型爆弾投下後の国民反応に触れ、ナンセンスなPRしかおこなっていないと痛烈に批判をされた。
 また戦争法にも触れ、安倍首相のPRは在留邦人の救助という“うわべの理由”で国民を欺いて説明し、現実は「原子力空母艦隊防護」などに従事しているとの現状に警鐘を鳴らした。
 最後に、「このような日本にすることもできる」と題して、自衛隊・防衛問題に関する世論調査を分析し、国民が期待しているのは「はたらく自衛隊」であり、「9条改憲」は望んでいないという指摘があった。
 
 次に、ポール・マーチンさんより米国を中心とした世界情勢について講義をうけた。冒頭、米国の多くの人たちの想いを代弁し、広島・長崎への原爆投下について謝罪を述べられた。その後、トランプ大統領の姿勢に触れ、軍事中心・利益追求の政治であるという点や、偏った予算の執行・配分に触れ、失望が大きいと述べられた。トランプ大統領の短気な性格では、核のボタンを押す権利を持つべきではなく、また軍事費の増大は議会の同調も相まって危機的であると警鐘を鳴らし、利益を人権よりも優先するトランプ主義を批判した。
 世界各地の情勢にも触れ、特に北朝鮮については緊張をさらに深めている状況であり、韓国へのTHAAD)配置は、北だけではなく中国・ロシアにも脅威であるということを述べられた。
 最後に、安倍首相はトランプ大統領にプレッシャーをかけられないが、私たちが安倍首相にプレッシャーをかけ続けけることの重要性について述べ、先人の“草の根運動”に学び、プライド・目的・力を持ってたたかっていこうという言葉で結ばれた。
 その後、会場からの質疑と長崎・沖縄からの活動報告を受けた。

長崎大会 第2分科会「平和と核軍縮2―核兵器禁止条約と東北アジア非核地帯化~展望と課題」  

2017年08月08日

長崎大会 第2分科会「平和と核軍縮2―核兵器禁止条約と東北アジア非核地帯化~展望と課題」
 
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 講 師:田巻一彦(ピースデポ代表) 
 参加者 70名
 
 ピースデポ代表の田巻さんから次のような報告があった
 7月7日についに、歴史上初めての「核兵器禁止条約」ができた。しかし、日本、アメリカ等の最も参加しなければならない国々が参加していない。また、北東アジアの状況も核兵器禁止条約の精神に反するような実態が続いており、私たち市民が具体的な要求を日本や核兵器を持つ国々に訴えていかなければならない。
 これらのことをふまえたうえで、以下の5点が提起された。
  ①核兵器の現状
  ②核兵器禁止条約
  ③北東アジアの危機と脅威
  ④米朝交渉を求める声(米、韓、北朝鮮)
  ⑤朝鮮半島非核化と「核兵器禁止条約」
 
 田巻さんの報告を受けて質疑が行われ、香川、東京、長崎、静岡の参加者から質問が出された。また、討論においては、長崎、静岡、熊本の参加者から意見が出された。また、「日本の報道では北朝鮮は怖い国と認識しがちであるが、日本の報道が偏っていると感じた」との感想も出された。
 田巻さんからは「北東アジアで北朝鮮の核を脅威と思っているのは韓国、日本、アメリカなどだ。しかし、北朝鮮が脅威と思っているのはアメリカのみ。したがって、私たちはアメリカに言わなければならないし、日本政府にも言わなければならない」との発言があった。
 
 最後に運営委員が、「北朝鮮の脅威の話題は避けては通れない。参議院選挙でも10代、20代の投票行動においても北朝鮮は怖い国との印象が強い。トランプ大統領になり、さらに北朝鮮は悪との意識が煽られている。北朝鮮の核兵器開発は今に始まったことでなく、冷戦構造の崩壊から始まっている。一方、私たちの政府の「国民保護ポータルサイト」は、広島原爆投下の時の対応と共通しており、現実離れしている。核兵器を一発落とされたら、それで終わり。その流れが核兵器禁止条約につながってきた。単なる脅威論でなく、朝鮮戦争の終戦協定を結び、北朝鮮の体制の保障などを日本がアメリカに求めていくことが必要だ。また、原発問題が日本の安全保障にすり替えられている。反原発の運動が大切であることも同時に確認された」とまとめを行った。

長崎大会 第3分科会「脱原子力1~福島原発事故の現状と再稼働問題を考える~」

2017年08月08日

 長崎大会 第3分科会「脱原子力1~福島原発事故の現状と再稼働問題を考える~」

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講師:伴英幸(原子力委資料情報室共同代表)
   後藤政志(元原子力プラント設計技師)         
海外ゲスト:キム・ポンニョ(韓国・脱核情報研究所所長)
参加者:120名
 
 原子力資料情報室共同代表の伴さんからは、福島原発事故によって受けた健康被害、放射能数値20シーベルトの健康影響を及ぼしかねない危険が潜む地域へ住民を帰すといった避難解除の問題について提起があった。
 元原子力プラント設計技師の後藤さんからは、安全の定義とは、リスクを許容できるかどうかどうかであり、許容できれば安全であり、許容の判断は個々であるということ。技術の進歩は、失敗を繰り返すことで進化を遂げていくものであるが、原子力の技術においては、失敗は許されるものではない。失敗の許されない技術は、存在しないとの興味深い提起が行われた。
 また、参加者からは、運転から40年を経過した原子炉が原子力規制委員会の審査に合格すれば60年の稼働が可能となったことをどのように受け止めればよいのか、廃炉に要する具体的な費用は、といった原発に対する意見が出された。
 
 海外ゲストである韓国・脱核情報研究所所長のキムさんからは、韓国における脱核、原子力からのエネルギーシフトの現状報告が行われた。韓国国内で大統領が脱核宣言を行ったことにより推進派と反対派の対立が激しくなっている現状や、推進派からは、集団的に大統領批判が繰り広げられる中、脱原発の取り組みを進めていきたいとの決意が語られた。
 最後に、各地域からの取り組み報告として、福島、佐賀、鹿児島からそれぞれ原発再稼働反対に向けた活動報告を受けて終了した。

長崎大会第4分科会「脱原子力2 プルトニウム利用とエネルギー政策の転換を求めて」

2017年08月08日

 長崎大会第4分科会「脱原子力2 プルトニウム利用とエネルギー政策の転換を求めて」

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講師:藤井石根(明治大学名誉教授)
   西尾漠(原子力資料情報室共同代表)
海外ゲスト:シュウ・グァンロン(台湾・台湾大学教授) 
参加者 86人

 2人の講師から、もんじゅの廃炉、六ヶ所再処理工場の大幅な遅れなど、プルトニウム利用路線の破綻は安倍政権が進める原子力政策そのものの破綻である。未来のない原子力に代わり、今後のエネルギー政策の展開を考える提言があった。また、海外ゲストから脱原発に向けた台湾の報告があった。これらの提言、報告を受けて、次のような質疑が行われた。
【質疑】 アジアで最初の脱原発をかかげた台湾であるが、代替エネルギーの関係で石炭が使われると環境と対立するのではないか。また、台湾では、放射性廃棄物の捨てる場所についてはどうするのか?
【応答】 高レベルの放射線廃棄物はかなり多くあるが、処理できるところは少ない。捨てる場所がないということを政府にもっと市民が訴えていかなければならない。
【質疑】日米原子力協定が2018年に見直されるだろうか?
【応答】政府は延長を考えているのではないか。再処理のことも考えていくべきとアメリカや国内外にも訴えていきたい。また、日米原子力協定改定に伴い、再処理を認めさせない方向にもっていきたい。
【質疑】3.11以降、原発のほとんどが止まっているが、二酸化炭素の量が増えている。
【応答】世界のトレンドは脱原発だ。3.11以降原発が止まり、火力発電にシフトしたが、政府は経済性を重視したのでCO?が増加した。電力の買い取り制度を導入し、太陽光発電の設置が多くなったが、大企業によって森林伐採など環境を破壊することになっていることもある。環境を破壊せずに自然エネルギーを拡大できるようにしなければならない。
【質疑】廃炉作業で労災事故も増えていて相談も多いようだがどうか?
【応答】労災として認められても、因果関係を認めたわけではない。被災者との協力体制をしっかりととっていきたい。

 
 最後に、エネルギー基本計画の見直しについては、原発に頼らない、CO?もださない、再生可能エネルギーの拡大を考えていくべきである。原発をベースロードと考えている政府に対し、意見を出していく必要がある。プルトニウムは原発をやめれば出なくなるのであり、廃棄物の再処理も必要なくなる。自然エネルギーへのシフトへ向け、地域でネットワークの構築をすることも大切であるとまとめ、分科会を終えた。 

長崎大会 第5分科会「ヒバクシャ1 核被害・ヒバクと補償問題を考える」

2017年08月08日

長崎大会 第5分科会「ヒバクシャ1 核被害・ヒバクと補償問題を考える」
 
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講師:豊﨑博光(フォトジャーナリスト)
参加者 21名
 
 講師の豊﨑さんから「世界の核被害者―核被害の現状と未来」と題して、被害補償という観点で、世界のヒバクシャがどう扱われているか、その実情を解説していただいた。
 アメリカの核実験の被害を受けたマーシャル諸島では、2017年3月に「核の負の遺産会議」を開き、「ヒバクシャは十分な補償を得る権利(Justice)があるとして取り組みを始めた。また、「核兵器禁止条約」の前文では「核兵器の非人道性」に触れ、「核兵器の壊滅的な結果が国境を越え、人類の生存や環境、将来世代の健康に重大な被害を与え、妊婦と女性への不均衡な影響を認識し、核兵器使用の被害者(ヒバクシャ)及び核実験の被害者の苦痛に留意する」としている。
 被ばく兵士への補償については、アメリカの被ばく兵士(被ばく退役軍人)には、原爆投下後の広島・長崎に進駐した兵士と大気圏内核実験に参加した兵士に対し、27の疾病に平均75000ドル支払われる。
 旧ソ連の被ばく兵士(原爆投下実験に参加した兵士)には補償法がない。実態も分か っていない。生存している被ばく兵士は10パーセント程度といわれる。
 核実験の被ばく者への補償では、ネバダ核実験の風下の被爆者には「放射線被ばく者補償法」でがん発病者に5万ドル、マーシャル諸島の核実験被ばく者にはアメリカとマーシャル諸島政府の間の条約で「核賠償裁定委員会」がつくられた。金銭的補償、医療保障では不十分。離島を余儀なくされた人々(被ばく難民)の補償に資産の損害、土地への損害賠償も計上されたが、一部しか支払われていない。
 旧ソ連のセミパラチンスクの核実験による被ばく者のうち、カザフスタン内の被ばく 者には特別な社会保障制度を適用しているが、ロシアのアルタイ地域やモンゴル内の  被ばく者は対象外となっている。
 ウラン採掘、精錬労働者への補償法があるのはアメリカだけだ。
 原爆被ばく者への補償では、「被爆者健康手帳」を持つ者を対象とし、他を「認定被爆者」「被爆体験者」として差別的扱いがある。
 原発事故による被ばく者への補償は、裁判で、被害者に因果関係の立証を求められている。
 これら以外の日本の被ばく者である、第五福竜丸乗組員やウラン採掘労働者、原発労働者は「被ばく者」としてではなく「労災」対象者とされている。
 参加者からは、マーシャル諸島の被ばく者の補償および低線量被ばく者の補償について質問が出された。

長崎大会 第6分科会「ヒバクシャ2─在外被爆者と戦争責任を考える」

2017年08月08日

長崎大会 第6分科会「ヒバクシャ2─在外被爆者と戦争責任を考える」
 
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講師:在間秀和(弁護士)
海外ゲスト:カク・キフン(韓国・元韓国原爆被害者協会会長)
      チョン・テホン(韓国・韓国原爆被害者協会釜山支部)
      山下泰昭(メキシコ・在外被爆者)
 参加者 16人
 
 弁護士の在間さんは、①旧植民地出身者、②被爆後日本国外に移住した被爆者、③戦争捕虜、④その他という在外被爆者の定義を示し、その上で、在外被爆者による闘いの経緯として、原爆2法(原爆医療法、原爆特別訴訟法)と1994年に制定された被爆者援護法が、国籍条項が定められていないにも関わらず国外に在住する被爆者に適用されておらず、裁判闘争を重ねて被爆者手帳の国外での取得、援護法の在外被爆者への適用を勝ち取ってきた歴史が紹介され、そのなかで日本政府が一貫して被爆者への責任を果たすことを回避し続けてきた姿勢について指摘がありました。
 
 韓国原爆被害者協会の元会長であるカク・キフンさんは、日本軍に招集された後、広島で被爆した際の体験、日本による朝鮮半島の植民地支配の問題点などを紹介しながら、「日本政府が外国にいる被爆者を援護しないのはおかしい。被爆者はどこにいても被爆者だ」と述べました。
 また、韓国原爆被害者協会釜山支部のチョン・テホンさんは、14歳のときに長崎で被爆し、被爆者が病気で亡くなっても当時はそれが原爆症であることは分からなかったことなど、戦後の苦労についてお話がありました。
 
 現在、メキシコに在住している山下泰昭さんは、6歳のときに長崎で被爆しました。その後、長崎の原爆病院で勤める中で、「被爆者とは結婚しない」という差別に直面し、メキシコオリンピックで仕事をしたことを契機にメキシコに移住しました。移住後も深刻な貧血に悩まされる日々が続きましたが、1995年のフランスによる南太平洋での核実験の際に、大学生に被爆体験を語ったことをきっかけに証言活動を開始しました。一時期はサンフランシスコの被爆者団体に所属していたものの、現在はメキシコで被爆者に関連する情報が得られず孤立した状態にあると報告しました。
 
 参加者からの政府の政策の問題点についての質問に対し、在間弁護士は、「被爆者援護と福島の原発事故の問題で共通するのは、政府が放射線による被害をできるだけ小さく見積もろうとしていることだ」と指摘しました。
 原爆による被害を国際的な視野でとらえ直し、「被爆者はどこにいても被爆者である」というカク・キフンさんの言葉を出発点にこれからの運動を進めることを確認しました。

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