2017年8月

広島大会 第4分科会「脱原子力―福島原発事故と脱原発」

2017年08月05日

 広島大会 第4分科会「脱原子力―福島原発事故と脱原発」

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講師:西尾獏(原子力資料情報室共同代表)
   飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
海外ゲスト:シュウ・グァンロン(台湾大学教授)
特別報告:長谷川健一(原発被害糾弾飯館村民救済申立団団長)
参加者 106名
 
 はじめに台湾の報告、続いて福島からの特別報告、そして福島原発の現状を西尾獏さんから、最新のエネルギー情勢を飯田哲也さんから報告を頂く順で進められました。
 
 シュウ・グァンロンさんは台湾で何が起きたか、その状況と不確実性、そして今後の課題と未来について語られました。2016年の総統選で民進党が勝利し、2025年までに全原発廃炉を表明、選挙後、2025年までに運転停止に後退しました。
 現状は、発電能力は約50GW、ピーク時の需要は36GWで、原発の占める割合は、1985年の48%から2016年は12%になっています。ただし、再生可能エネルギーは2GWと低調。従って、台湾電力は、今もって電力不足が生じると宣伝し、継続を狙っています。一方で再生可能エネルギー開発が遅れており、脱原発=石炭火力となり、反原発と反公害が対立する関係が生じかねない危険性があると指摘し、情報開示の必要性を強調しました。
 
 つづいて長谷川健一さんからは福島の現状が話されました。原発周辺自治体で最も情報が遅れ、不必要な被ばくを受け、その上、一家8人が一緒に暮らしていた家を放棄し、家族がバラバラにされ、それは今や回復の見込みがない状況に置かれていることが話されました。自分は戻りたいが、子や孫に被ばくさせたくない気持ちから一緒に帰ろうとは言えない、と苦しい気持ちを話してくれました。汚染水の行方、フレコンバックの処理、すべてが高齢者の街、このようなところに全天候型のテニスコートがいるのか、と行政に強い不信を持っていました。
 
 西尾獏さんは、チェルノブイリはある意味終わっているが、福島はどうなったら事故は終わったといえるのか、今も事故を起こしている最中であり、終わったといえない、何故なら現在どうなっているかわからないからである、とショッキングな話を冒頭からされました。 
 そしてそもそもどうやって事故が起きたのかもわかっていない、中に入ることもできない状況であり、世界初の1号機から4号機まで同時におきた事故、世界初の自然災害によるシビアアクシデントである、と強調されました。安全神話が生んだ想定外であり、今後、賠償問題を含めて解決不能な問題ばかりが残されている。そのような中で再稼働は異常であるし、その上もとに戻そうと原子力村は動いている、と指摘されました。しかし、原発は定期点検ごとに今後も止まるし、現在5基しか動いていないことを市民にもっと伝えていこう、と提起されました。
 
 飯田哲也さんは、驚くほどの勢いで再生可能エネルギー開発が進み、原子力の時代は、完全に後退時期に入ったと多くの資料を提示しながら解説されました。コスト低減も著しく、世界中で自然エネルギー価格の低下が起きていること、大型火力から小電力地域エネルギー政策への転換が進んでいると紹介されました。ドイツの巨大電力会社も「自然エネルギー分野への参入が遅れた、いや、遅すぎたのかもしれない」との発言を紹介し日本は世界に立ち遅れている、と知らされました。

広島大会 第5分科会「ヒバクシャ1─世界の核被害者の現状と連帯を考える」

2017年08月05日

広島大会 第5分科会「ヒバクシャ1─世界の核被害者の現状と連帯を考える」
 
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講師:豊﨑博光(フォトジャーナリスト)
   振津かつみ(医師)
参加者 60人
 
 2本の講演を受けて意見交換することで進められた。1つ目の講演として、『世界の各被害者2017-被害者の現状と未来』として、豊崎博光さんより提起を受けた。冒頭、豊崎さんは、「核兵器禁止条約は24項目からなり、核使用により被害を受けたヒバクシャを軸とした被害者側に寄り添った条例である」といったことに触れ、核実験による被害の状況や、原爆被害の問題について講演された。
 核実験による被害は、甚大なものがあるが、補償がされていない現状である。また、核実験による人権侵害として、地元を避難することや自給自足の生活を余儀なくされてしまうこと、生活サイクルの乱れなどに現れ、こうした人たちが多く存在している現状である。また、原発稼働により、世界的にも多くの被害者を出していることを指摘。
 原爆被害者の状況としても、地域に限定されており、全体が補償の対象になっていない現状がある。また、この補償は保証でなく「援護法」であり、政府の財源がなくなれば打ち切りとなるものであることも強調された。この他に、原発労働者の課題等に触れられた。
 
 2本目は、『世界の核被害者の人権と保障を求める運動との連帯』として、振津かつみさんからの講演を受けた。
 核開発と利用は、被害者なしに成り立たないとし、核は軍事平和利用を問わず、ウラン採掘から核廃棄物に至るまで、あらゆる過程で核被害者を生み出している。フクシマやチェルノブイリの原発事故やウラン開発など、汚染により居住地が剥奪され、生活が奪われる。また、健康障害も長期に及び、二世や三世にも影響を及ぼす。そんな中、被害者の権利と保障問題については確立されていないと語られた。
 
 その後、参加者からの質問や意見を聞き、3人の方が発言された。最後にまとめとして、被爆者は、原爆被害だけでなく原発や開発にあたる多くの人にも多大な影響を与える。しかし、現状は不十分な補償しかない。核兵器禁止条約が提案され、今後いかに実行するかが課題である。ぜひ日本政府による条約批准を促し、核保有国が批准する運動を進める必要がある。
 また、被害者援護の運動と連帯し、補償問題を解決できるよう取り組みを強化せねばならない。安倍政権の戦争への道、原発再稼働に対抗し、平和と民主主義、基本的人権の尊重、憲法を守る取り組みを進めるため、各地域・職場で取り組みを進めていただきたい。とし、分科会を終えた。

広島大会 第6分科会「ヒバクシャ2-在外被爆者と戦争責任」

2017年08月05日

広島大会 第6分科会「ヒバクシャ2-在外被爆者と戦争責任」
 
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講師:平野伸人(韓国の原爆被害者を支援する市民の会)
海外ゲスト:カク・キフン(韓国・元韓国原爆被害者協会会長)
      山下泰昭(メキシコ・在外被爆者)
参加者 36名
 
 海外ゲスト2名と韓国の原爆被害者を支援する市民の会から平野伸人さんを講師として招き、ヒロシマ・ナガサキの原爆被害者や在外被爆者の現状と、いまだに残る課題について討論を行いました。初参加の方が多数おられましたが、皆さん熱心に聞き入り、積極的に発言できる雰囲気の中で有意義な分科会となりました。
 初めに、韓国原爆被害者協会の元会長であるカク・キフンさんから、1910年の韓国併合から強制徴用されたこと、また被爆してから被爆後遺症の支援にいたるまでの辛い経験をスピーチいただきました。
 次に、長崎県出身であり、被爆したことを契機にメキシコへ移住された山下泰昭さんから後遺症に苦しめられた過去を語っていただきました。
 次に、平野さんから被爆者の残された課題として、「原爆症認定問題」「被爆体験者・黒い雨地域等の被爆地是正の問題」「被爆二世・三世問題」「在外被爆者問題」の4つの課題が残されていると提起されました。また、政府は戦争責任として認識しておらず、社会保障としての対応をしており、あらためて二度とヒバクシャをつくらない、二度と戦争をしないことを確認しました。
 
 会場からは、二世・三世についての社会的差別・偏見についての質問や、原爆症・被爆者健康手帳の認定についての質問など活発な討論が行われました。差別・偏見は特には感じなかったとしながらも、援助があるかないかの観点から、被爆者にはなりたがるが、二世にはなりたがらないとした回答が印象的でした。
 カク・キフンさんは韓国に帰ってからの差別はないと回答しましたが、植民地支配に組み込まれてしまった立場もあり、デリケートな問題として今後の課題でもあるとしました。原爆症等の認定問題に関しては、これまでの取り組みの成果により認定基準が見直されたものの、被爆者の思いとは大きな差があり、現在でも100件以上の裁判が続けられています。
 最後に、これらが今後も引き続いての課題であることを確認し、閉会となりました。

広島大会 第7分科会 「見て、聞いて、学ぼうヒロシマ」 

2017年08月05日

広島大会 第7分科会 「見て、聞いて、学ぼうヒロシマ」 
 
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講  師:金子哲夫(広島県原水禁代表委員)
被爆証言: 平野貞男(広島県被団協・被爆を語り継ぐ会)
参加人数  250人
 
 はじめに30分ほど「君たちはゲンバクを見たか」のビデオを鑑賞。その後、被爆当時13歳の軍国少年だったという平野さんから、生々しい被爆体験の報告を受け、非人間的な原爆被害の悲惨さ、当日の惨状などを聞きました。また、安倍政権の下で「一億総活躍社会」などという言葉を聞くと、戦時中に耳にした「一億火の玉になって」を思い出し、とても嫌な思いがよみがえるとも語られました。
 
 次に、広島県原水禁代表委員の金子さんから「核と人類は共存できない―原水禁運動の歴史 反核の父・森瀧市郎先生に学ぶ」と題しての講演で、原水禁運動の理念と歴史の解説を受けました。
 今年7月7日、国連で「核兵器禁止条約」が採択されましたが、その前文では「核兵器の使用による被害者(ヒバクシャ)ならびに核兵器の実験によって影響を受けた人々に引き起こされる受け入れ難い苦しみと危害に留意する」とあります。この間、被爆者が様々な場で訴えてきた被爆の実相が国連の場でもしっかりと受け止められている成果と指摘。
 反核の父といわれる森瀧さんも「核の平和利用にバラ色の未来を望んだ」(1955年第1回原水禁世界大会宣言)時代があったものの、1975年の世界大会基調提案では「核は軍事利用であれ、平和利用であれ、地球上の人類の生存を否定するものであると断ぜざるを得ない・・・結局核と人類は共存できない・・・『核絶対否定』の道しか残されていない」と明確に示されていました。
 また、原水禁国民会議が原発問題に取り組んだ経緯、ウランの採掘現場等での被ばくの問題や、再び核被害者を作らせてはならないという強い決意がどのような背景のもとに生まれたのかを説明。そして、被爆者救援運動と国家補償を求め続けることの考え方、座り込み行動を貫く「非暴力」の姿勢などについて話されました。
 
 質疑では、戦争への道を進むことのないよう、これから選挙権を持つ高校生たちにどのように教えるべきかなどの質問がありました。安倍総理は国民の財産・命を守るためにというが、シリアなどの内戦で犠牲者の9割はただの市民であることを見れば、戦争になれば市民がより多く犠牲になるという実態を知ること、「被爆者にはなれないが近づくことはできる、そのためにどう努力するかを考え、行動するべきではないか、信念を曲げず言い続けることが大事」と回答されました。

被爆72周年原水爆禁止世界大会・広島大会に2700人

2017年08月04日

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8月4日から広島市内で、被爆72周年原水爆禁止世界大会・広島大会が始まりました。大会に向けて毎年、全国で「非核平和行進」が取り組まれ、この行進が広島の平和公園資料館前に到着。各都道府県・団体も合流し、「折鶴平和行進」が行われました。参加者は横断幕やのぼり、プラカードを手に、「核廃絶を実現しよう!」「原発震災を許さない!」「すべてのヒバクシャの支援を!」などとシュプレヒコールを繰り返しながら、炎天下の繁華街でアピールしました。参加者の中には親子連れも目立ち、元気よく県立総合体育館まで行進しました(上写真は海外ゲストを先頭に平和公園を出発する参加者)。
 
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 県立総合体育館大アリーナで開かれた開会総会には2700人が参加。原爆の犠牲者などに黙祷を行った後、主催者を代表し、川野浩一大会実行委員長(原水禁国民会議議長)は、「安倍政権の暴走に国民が不信を強めている。いまこそ私たちの運動が重要だ」とした後、「核兵器禁止条約が国連で採択されたことの意義は大きい。しかし、日本は採決に加わらず、被爆者は国に見捨てられた思いだ。いまこそ米国の核の傘から脱却すべきだ」と強調。さらに、高齢化する被爆者の援護の重要性や、再稼働を進める原発政策も厳しく批判し「全ての闘いに取り組むことが人類の生き延びる道だ」と呼びかけました。
 広島市長、広島県知事(ともに代理)の来賓挨拶に続き、海外ゲストを代表し、アメリカ・ピースアクションのポール・マーチンさんが「米国人として、原爆を投下したこと、また、トランプを大統領に選出したことを謝罪したい。しかし、この間、私たちはともに闘い、核兵器削減や禁止条約などの成果を上げてきた。よりよい社会を作るために草の根の運動が一層大切になっている」と訴えました。
 被爆者の訴えを広島県被団協の白石多美子さんが行いました。白石さんは6歳の時に爆心地から4キロ離れた宇品で被爆。幸いにも大きな怪我はなかったものの、爆心地に近い所で祖母を探しながら見た光景や臭いは忘れられないと切々と述べました。最後に「人間はもちろん、生きているものは全て平和こそが最大の望みだ。武器ではなく、言葉や優しさを持って平和を守っていこう」と参加者に呼びかけました。
 これに応えるかのように、今年の第20代高校生平和大使に選ばれた広島県内の3人の女子高生が立ち、「原爆の悲惨さを風化させず、多くの被爆者の思いを受け継いで、国連の場に届けたい」と決意を述べました。高校生平和大使は、8月半ばにスイス・ジュネーブの国連欧州本部を訪ね、署名を手渡すとともに、各国代表に訴えることにしています。
 また、福島からの報告を角田政志・福島県平和フォーラム代表が行い、事故が収束していない中で、被災者への帰還が強制されている実態などが話されました。
 大会基調の提案を藤本泰成大会事務局長が行い、最後に全員で「原爆許すまじ」を合唱。閉会挨拶で広島実行委員の秋葉忠利さん(元広島市長)は「核廃絶に向けて着実な歩みが始まった歴史的な年の大会になった。禁止条約が発効すれば、核兵器は法律違反になる。日本も批准をさせて、核廃絶を実現しよう」と強調して幕を閉じました。
 5日は広島市内で分科会やひろば、子どものひろば、フィールドワークなど多彩な取り組みが行われ、6日に広島大会のまとめ集会が行われます。

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