東海第二原発の「運転期間延長」認可に対する原水禁声明
2018年11月08日
原子力規制委員会は、11月7日、稼働から40年を超える東海第二原発(茨城県東海村)の運転期間を、今後最長20年延長できることを認めた。原則40年とされていた原発の運転期間の延長は4基目で、老朽原発の稼働はきわめて危険として「運転延長は例外中の例外」としてきたこれまでのルールを、原子力規制委員会は自ら形骸化させている。原発稼働の長期化は原子炉容器の脆弱性を高めるとともに、様々な場所・場面での事故リスクをも高めていく。老朽原発の稼働は様々な問題を抱えるだけに、原水禁は今回の「運転期間延長」認可に強く抗議する。
東海第二原発は、福島第一原発と同じ沸騰水型原発(BWR)では初めて規制基準の適合性が認められるもので、東日本大震災で被災した原発であり、機器の劣化や不具合も心配される。今回の認可で更田委員長が「運転開始から60年たっても機器の劣化は問題ない」「東日本大震災の影響がない」と発言し、日本原電の説明をそのまま了承した責任は極めて重く許されるものではない。これまでの規制基準適合に際して「安全とは認めたわけではない」との言い訳はもはや通じない。
日本原電は、東海発電所・敦賀発電所1号機の廃炉を決定し、東海第二原発の再稼働は敦賀発電所2号機とともに、日本原電の企業経営の存続の問題となっている。日本原電自体の財務基盤が極めて弱いことはこれまでも度々指摘されており、安全対策工事を、東京電力などの電力会社からの資金援助で進めようとしている。積み立ててきた廃炉費用でさえ取り崩していることも問題であり、そのような会社に、これ以上原発を動かす資格はない。
東海第二原発は、30キロ圏内に約96万人が暮らしており、都心からもおよそ110キロの距離に立地している。一度過酷事故が起きればその被害は計り知れず、日本原子力発電(日本原電)だけで背負いきれるものではない。
今回の認可によって、再稼働に向けたハードルは、周辺自治体との合意(日本原電と6市村で結んだ新協定)のみとなる。原発から30キロ圏内の自治体では、具体的避難計画など立てられる状況にない。すでに那珂市長は反対の姿勢を示し、水戸市議会も再稼働反対の意見書を出している。福島原発事故の後、茨城県内の44市町村のうち34
市町村の議会で「再稼働反対」や「廃炉を求める」、あるいは「住民同意のない再稼働は認めない」など慎重な対応を求める意見書が採択されている。首都圏においても複数自治体からも、再稼働や20年間稼働延長に反対する議会決議などが上がっている。世論は、原発の再稼働より廃炉を求める声が大きいのが実態だ。そのような中で日本原電という一企業の存続のために多くの人々が危険に晒されることは許されない。さらに日本原電は、このことに関して市民社会に対してまともに説明をしていない。
いまや原子力は廃炉の時代を迎えている。老朽化した東海第二原発は、たとえ再稼働しても20年後には確実に廃炉となる。その過程でさらに大量の放射性廃棄物を生みだし、事故のリスクを常に抱え続けることを考えれば、絶対に再稼働を許すわけにはいかない。原子力規制委員会は、これまでの設置変更許可・工事計画認可・運転期間延長認可などの認可をすみやかに取り消し、東海第二原発を廃炉にすべきである。日本原電も、世論に真摯に耳を傾け東海第二原発の廃炉と新たな事業展開を考えるべきである。
原水禁は、今回の「運転期間延長」に強く抗議するとともに、脱原発社会の実現に向け、取り組みの一層の強化を図るものである。
2018年11月8日
原水爆禁止日本国民会議
議長 川野 浩一