2019年8月

子どもたちの未来のために 長崎大会・閉会総会を開催

2019年08月09日

子どもたちの未来のために 長崎大会・閉会総会を開催

 

  8月9日、長崎総合体育館・メインアリーナにおいて、被爆74周年原水爆禁止世界大会・長崎大会の閉会総会が行われました。

松田議長 閉会.jpg

 長崎実行委員会の挨拶として、松田圭治・長崎大会実行委員長が、「長崎大会が厳しい国際情勢の中で開催され、多くの議論を重ねた」と現在直面する多数の課題を例に挙げ、核兵器問題だけではなく、多くの課題に取り組まねばならないと述べました。

たすき渡し.jpg

 続いて、原水禁・非核平和行進のたすき返還が行われ、長崎の嵩靖文・長崎地区労副議長から沖縄平和運動センター議長の山城博治さんにしっかりとたすきが手渡されました。

山城 閉会.jpg

 山城議長は、沖縄の青々とした海の写真を見せながら、沖縄に対する安倍政権の差別政策を例にあげて、現政権に打ち勝とうと会場に訴えかけるとともに、「平和の声を上げていこう」と拳をあげました。

高校生達 閉会70.jpg

 会場の端から端まで並んだ高校生平和大使、高校生1万人署名のメンバー150人以上が、この1年間に集めた署名数が20万筆を超えたことを報告してくれました。2018年にノーベル賞へノミネートされたことの報告など、活動が注目されていることがわかりました。

ソンミヒ.jpg

 海外ゲストを代表し、進歩連帯のソン・ミヒさんが、「朝鮮半島と東アジアの大転換が起きている、保守勢力に負けないようにしなくてはならない。平和憲法をしっかりと守り、長崎と広島の悲劇を繰り返してはならない。」と怒りを込めて力強く発言しました。

大会まとめ藤本.jpg

 藤本泰成・大会事務局長が長崎大会のまとめ(全文リンク有り)として、8日に行われた各分科会の要点とそれぞれの今後取り組む課題について、述べました。多岐にわたる課題に、今後の取り組みの強化が求められました。

大会宣言文読み上げ 閉会.jpg

 「被爆74周年原水爆禁止世界大会・大会宣言(案)」を、山下薫・長崎大会実行委員長が読み上げ提案すると、会場からは拍手で、大会宣言が採択されました。

則松 閉会.jpg

 最後に、則松佳子・大会副実行委員長は「私たちの学びと行動を点で終わらせず、各地でつないでいって下さい。それは子どもたちの未来につながっていくものです」と閉会のあいさつをしました。

 

平和行進.JPG

 閉会総会後には、県立総合体育館から爆心地公園まで、非核平和行進が行われました。

献花.jpg

 爆心地公園に到着した後、大会参加者は原爆中心碑前に集まり、川野実行委員長、マーシャル諸島からの海外ゲスト、サマンサ・ハナーグさん(REACH-MI副代表)のほか、各団体による献花が行われました。原爆投下時刻である11時2分には、サイレンの合図で、その場にいた全員が黙祷を捧げました。

 

黙祷.jpg

 被爆者の高齢化に伴い、戦争の記憶の継承が重要なものとなっています。「バーチャルゲーム」の中では、プレーヤーは何度死んでしまっても、生き返ることができます。しかし、現実には、死んでしまった人は二度とかえってくることはありません。被爆74周年を機に、改めて「核兵器のない平和な21世紀」を私たちの手でつくっていく決意をしなければなりません。

原爆投下中心碑.jpg

 

 

 

原水爆禁止世界大会・長崎大会のまとめ

2019年08月09日

 

被爆74周年原水爆禁止世界大会長崎大会まとめ

 

原水爆禁止世界大会実行委員会

事務局長 藤本泰成

 

     被爆から74年目の原水禁世界大会長崎大会も、終わりに近づいてきました。福島、広島、そして長崎と、参加された多くの皆さまに、各分科会でお話しいただきました講師、海外ゲストの皆さまに、そして実行委員会の皆さまのご努力に、心から感謝を申し上げます。少しのお時間をいただき、私なりのまとめをお話しさせていただきます。

 

 第一分科会「日米同盟強化と沖縄」では、ジャーナリストの前田哲男さんから、「82日に生じた2つの危険な情勢」と題する新たなレジメが配られました。韓国の元徴用工が起こしていた裁判の判決に対する、韓国政府の姿勢に不満な安倍政権は、82日、輸出優遇措置いわゆるホワイト国からの韓国除外を、閣議決定しました。日韓関係は深刻な対立の事態を迎えています。

 

 前田さんは、日朝国交正常化連絡会の顧問、和田春樹東大名誉教授などが出した「韓国は『敵』なのですか」との声明が、1週間で18万人の賛同者を得たことを紹介して、「意見が違えば、手を握ったまま討論を続ければいいではないですか」との言葉を援用しています。

 

 韓国からのゲスト、韓国進歩連帯・韓国国際平和フォーラムのソン・ミヒさんは、南北の対話や米朝首脳会談が行われ朝鮮半島・東北アジアが変貌していこうとする中にあって「韓国と日本の平和勢力は、歴史の転換を妨害している韓日の保守勢力に対抗し、東北アジアの平和と繁栄の道を切り拓くため、共に手を取り合おう」と呼びかけ、安倍政権に対しては「誠実な過去精算により、経済規模に見合った、責任ある東アジアの一員に戻ってください」と述べています。

 

 原水禁運動は、東北アジアの非核化や在日米軍基地問題に、そして在外被爆者問題を通じて、戦後補償の課題にも積極的にとりくんできました。ソン・ミヒさんの指摘にあるように、韓日の対立は、経済だけではなく、歴史や政治・軍事問題に拡大し、全面化しています。私たちがめざす、東アジアの平和にとって日韓関係、そして日朝関係の正常化は重要な課題です。原水禁は、関係の正常化と朝鮮半島・東北アジアの非核化に向けてとりくみます。 

 

 もう一つの82日の危険な情勢は、米露間の中距離核戦力全廃条約の失効です。

 

 イージス・アショア配備問題で防衛省交渉した際に、イージス・アショアの発射台で攻撃用ミサイルを発射できるかと質問したことがあります。防衛省側の回答は「可能である」と言うものでした。

 

 前田さんの指摘では、中距離核ミサイルの発射台となることも考えられます。米国からは「同盟国の責任を果たせ」との要請の声も聞こえ、今後非核三原則の課題となることが懸念されます。原水禁が主張してきた非核三原則法制化のとりくみも重要となってきます。原水禁は、核のない世界をめざして、核兵器禁止条約の発効にむけて、「核兵器廃絶1000万署名」に全力でとりくみます。

 

 第三、第四分科会では、原発と自然エネルギーの課題が話し合われました。原子力市民委員会委員で原子力工学の専門家後藤正志さんからは、過酷事故対策も人間の手で行われている以上確実に機能する保障はないとして、また、多重・多層防護は事故の発生確率を減らすことができても事故をなくすことはできないと、その限界にも言及し、再生可能エネルギーシフトが必然と述べています。

 

 原子力情報室共同代表・原水禁副議長の西尾獏さんは、様々な資料を提示しながら、原子力政策の矛盾と行き詰まりを指摘しています。同じく原子力資料情報室の松久保肇さんは、国の第5次エネルギー基本計画にある2030年原子力エネルギー比率2220%程度は、原子力発電所の34基程度の再稼働を必要とするとして、この計画にリアリティーはないと指摘しました。

 

 西尾さんは、エネルギーフォーラム佐野編集主幹の「とても残念だが、原子力発電所の新増設は、もう無理だと、つくづく思うようになった。もう、建設に振り向ける資金余力はない。そんなものに、1兆円近くを融資する金融機関は、あり得ない」と言う言葉をひいて、原発の終焉を示唆しています。

 

 ドイツ連邦議会のクラウス・ミンドルップ議員は、ドイツで再生可能エネルギーの比率が、今年で40%に達すると報告されました。2030年までに65%、2050年までに95%の見込みであるとしています。

 

 ドイツでは、福島原発事故の直後の2011326日、「フクシマを見よ。全原発の閉鎖を」とのスローガンの下、約25万人が参加する反核デモがあり、それまで原発推進派であったメルケル政権は、「確実なエネルギー供給のための倫理委員会」を設置し、最終的に原発の段階的廃止と再生可能エネルギー移行を提案しました。政府の姿勢によって、日本とドイツで、事故から8年後、大きな違いが生まれています。

 

 開会総会で、福島県平和フォーラム瓜生忠夫副代表から、訴えがありました。国策で推進してきた原発の重大事故で被爆した県民、国と東電はしっかりと責任をとれの要求は、あたりまえのものです。原水禁は、健康被害に対する医療支援や生活支援を、国に対してしっかりと要求していかなくてはならないと考えます。

 原水禁は、「核と人類は共存できない」との先輩の言葉を胸に、「さようなら原発1000万人アクション」の運動を、大江健三郎さんや瀬戸内寂聴さんなどの協力で、多くの市民とともに展開してきました。

 

 第三分科会には、原発ゼロ基本法案をとりまとめた、立憲民主党衆議院議員の山崎誠さんにもおいでいただき、原発ゼロ社会に向けたとりくみをお話しいただきました。「脱原発社会」の成立まで、原水禁は、市民社会とともに、しっかりと頑張って行きます。

 

 原水禁世界大会長崎大会が始まった87日、沖縄県は、辺野古新基地建設をめぐって「県が実施した埋立承認の撤回を国土交通大臣が取り消した裁決は違法として、その裁決撤回を求める訴えを起こしました。

 

 第一分科会で沖縄平和運動センターの山城博治議長は、「30度を超える炎天下で、毎日毎日、安倍政権の不条理に抗議の声を上げている、 しかし、全ての声が無視されている現状がある」「なんでここまで収奪され、無視され、また再び防衛の盾にさせられる、だったら捨ててください、沖縄を捨ててください、そんな気もしてきます」と真情を吐露されました。

 

 山城さんの「平和の声を堂々と上げていこう」との力強い言葉を、私たちは受け止めなくてはなりません。

 

 沖縄は、琉球王国から、琉球処分をもって明治政府に編入させられました。強いられた皇民化教育、そして沖縄戦と捨て石作戦、戦後は米軍統治下を経て、本土復帰後も、在日米軍の基地の74%も抱えることになる。

 

 沖縄は、一貫して差別にさらされて来ました。沖縄の歴史をしっかりと見つめ、沖縄県民の思いをしっかりと受け止め、沖縄県民とともに闘いを進めなくてはなりません。

 

 昨日の朝日新聞に、長崎で被爆した中村由一さんの話が載っていました。
放射線傷害で髪が抜け落ち「カッパ」とあだ名された。髪が生えてきたら「ゲンバク」になった。

 

 被爆者と言うだけで差別された。同級生に破かれた小学校の卒業証書を見ると、あの頃の孤独や怒りがよみがえってくるといいます。差別は、長崎の被爆から66年を経て、福島から避難した子どもたちにも向けられたことを忘れてはなりません。

 

 韓国をホワイト国から外すことに、日本人の9割が賛成しているといいます。そこに、戦前の殖民地時代から引きずってきた、アジア蔑視の差別意識がないでしょうか。

 

 沖縄と韓国、広島・長崎の被爆者と福島からの避難者、私たちは、私たち日本人は、一体何を歴史に学んできたというのでしょうか。

 

 私たちは、一人ひとり、かけがいのない、取り替えることのできない、命なのだ。命の尊厳を、一人ひとりの命の尊厳を、基本にして原水禁運動は成立してきました。そのことを決して忘れてはなりません。

 

 「人間は生きねばなりません」という、故森滝市郎原水禁議長の言葉。決して取り替えることのできない、世界でたったひとつの、私の命として、私たちは「生きねばならない」のです。

 

 原水禁運動の原点を持って、被爆74周年、原水禁世界大会のまとめといたします。

 

 福島大会から、本当に長い間、ありがとうございました。

 

2020年核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議に向けたシンポジウムを開催

2019年08月08日

 

2020年核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議に向けたシンポジウム

~核兵器廃絶1,000万署名に向けてキックオフ!~

 

 8月8日、原水禁、連合、KAKKINの三団体主催による「2020年核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議に向けたシンポジウム~核兵器廃絶1,000万署名に向けてキックオフ!~」(キックオフ集会)が開催されました。

りきお.jpg

 主催者三団体を代表し、神津里季生連合会長が「2020年に行われるNPT再検討会議に向けて勢いを付けて署名に取り組む」と挨拶をしました。

外務省.jpg

 続けて、外務省報告として、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部軍備管理軍縮課長の今西靖治さんが、2019年のNPT準備会合で話し合われたこと、これまで2回開催された賢人会議の継続開催の必要性を訴え、来年に向けて日本政府も力を入れて行くことを述べました。

被爆証言.jpg

 被爆者の訴えとして、長崎平和推進協会の奥村アヤ子さんが、「家族9人で幸せにすごしていましたが、原爆のために、一瞬にして、家族は引き裂かれ、当時8才だった私は、本当に辛く寂しい毎日でした」と涙ながらに語られました。

吉田.jpg

 「核兵器をめぐる最近の国際情勢」と題して、長崎大学核兵器廃絶研究センターの吉田文彦センター長が基調講演を行いました。「みなさんもできることから、核兵器を廃絶するための取り組みをやって下さい」と会場へ呼びかけました。

決意表明.jpg

 続いて、三団体よりそれぞれ2人ずつが登壇し、代表して、連合副事務局長の山本和代さんが「核兵器廃絶1000万人署名」の趣旨を説明し、世論喚起に取り組むと決意表明を行いました。

フィナーレ.jpg

 最後は、手話付きの「For The Peace Of World」を会場全体で合唱し、閉会となりました。

 キックオフ集会で決意を新たに、2020年NPT再検討会議へ向け、核兵器廃絶のため、署名活動に取り組んでいきましょう。

 

 

 

長崎大会 第8分科会 見て・聞いて・学ぼう"ナガサキ"

2019年08月08日

 被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第8分科会 見て・聞いて・学ぼう“ナガサキ” 
 
 
日時:8月8日(木)9:30~12:30
会場:NBC別館 3F ビデオホール (長崎市上町1-35/℡095-826-5300)
DVD上映:『君たちはゲンバクを見たか』(2001年 原水禁国民会議制作 23分)
被爆証言:山川剛(長崎県原爆被爆教職員の会)
講演:西岡由香(漫画家)
 
内容:映像や被爆者の証言などを通して被爆地・ナガサキの実相にふれ若い世代へとつなぐ運動継承について、DVD上映の鑑賞、講演を通して学びました。
 
 
 

長崎大会 第4分科会 脱原子力Ⅱ─原発政策の矛盾

2019年08月08日

 被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第4分科会 脱原子力Ⅱ─原発政策の矛盾
 
 
日時:8月8日(木)9:30~12:30
会場:長崎新聞文化ホール 3F 真珠の間 (長崎市茂里町3-1/℡095-844-2412)
講師:後藤政志(元原子炉格納容器設計技術者)、西尾漠(原子力資料情報室共同代表)/現地報告:福島、高校生平和大使(福島選出)
 
内容:福島原発事故以来、原発の安全対策強化の費用が莫大になり、以前から高かった原発のコストが、さらに高くなってきました。結果として安倍政権が押し進めようとしていた原発輸出はとん挫し、企業は多額の負債を抱えるようになっています。核燃料サイクル計画も事実上とん挫し、またMOX燃料工場の目処もたたず、47トンも抱えるプルトニウムの使用計画も示すことができないままとなっています。原発政策の全体像を展望しながら、その矛盾を明らかにし、脱原発社会へのとりくみについて、福島県選出の平和大使、福島現地からの報告、講師からの講演を経て、質疑応答が行われました。
 
 
 
 

長崎大会 第7分科会  ヒバクシャⅢ─被爆二世・三世問題の 解決に向けた運動の意義と展望

2019年08月08日

 被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第7分科会  ヒバクシャⅢ─被爆二世・三世問題の

解決に向けた運動の意義と展望

 

長7.jpg

日時:8月8日(木)9:30~12:30

会場:長崎県勤労福祉会館 4F 第2・3中会議室 (長崎市桜町9-6/℡095-821-1456)

講師:中鋪美香(被爆二世集団訴訟弁護団・弁護士)、崎山昇(全国被爆二世協会長)、

平野克博(全国被爆二世協事務局長)

報告:高校生平和大使

◆初参加者は3割程度

 

  第7分科会「ヒバクシャⅢ-被爆二世・三世問題の解決に向けた運動の意義と展望」は参加者44名(初参加11名、被爆一世5名、二世7名、三世3名)で開催された。冒頭、長崎県被爆二世の会会長の丸尾さんから「被爆二世の運動をみなさんに知ってもらいたい」とのあいさつを受けたのち、高校生平和大使からのアピールが行われ、分科会に入った。

 最初に、全国被爆二世協の崎山昇会長から「再び核被害者をつくらないために 将来世代を含む核被害者の人権確立と核廃絶をめざして」と題した報告を受けた。崎山会長は、全国被爆二世協の活動として、被曝二世・三世を5号被爆者と位置づけたうえで、国家補償を明記した被爆者援護法を適用することを求めてきたことが報告された。しかし、なかなか要求が実現しない中で、国内的には、被爆二世集団訴訟に取り組んでいること、国際的には、国連人権委員会での対策を行ってきたことや、今後については、来年行われるNPT再検討会議での意見反映に取り組んでいくことが報告された。

 続いて、被爆二世国家賠償請求訴訟弁護団の中鋪美香弁護士から「被爆二世集団訴訟〜意義と展望、現在の訴訟経過について〜」と題した報告を受けた。中鋪弁護士は、被爆二世集団訴訟は、被爆二世に対する援護の問題について、国が全く対応してこなかった状況が背景にあり、放射線被曝の遺伝的影響への問題提起を行い、司法の場を通じての解決をめざして行くことが目的であると述べた。このため裁判では、立法不作為の違法性について主張するとともに、立法義務を生じさせるための、放射線被曝の遺伝的影響についての科学的裏付けについて、争っていることが説明された。最後に、現在裁判は、広島地裁、長崎地裁において原告・被告双方の主張のやりとりが続いており、今後も裁判が続くので、ぜひ傍聴に参加して欲しいと述べた。

 さらに、平野克博全国被爆二世協事務局長から、「今後の取り組みについて」と題した提起を受けた。被爆二世の集団訴訟を通じて、原子力政策も含めて、国の政策の変更を迫って行くこと、また、国連人権委員会の取り組みなどを通じて、国際的な理解に比して、日本政府の対応があまりに後ろ向きであることがわかったので、裁判や、国会対策、被爆二世の健康診断の充実など、自信を持ってさらに取り組みを続けていきたいこと、被爆二世・三世の組織の拡大などに積極的に取り組んでいきたいことなどが、提起がされた。

 質疑としては、「私は被爆三世だが、自らの問題として、考えたことはなかったので非常に参考になった(高校生平和大使)」「被爆二世・三世の方々の置かれている状況を初めて知った。被爆二世・三世に対する差別の具体的事例を教えて欲しい(新潟)」「被爆二世・三世に対する差別の問題については、その解消に向けて、国の責任で教育も含め対応すべき。(広島)」「学校で8月6日と8月9日に平和学習をしている。二世・三世の問題も今後、子どもたちに伝えていきたい(大分)」などの意見、質問が出された。

 最後に、広島県被爆二世団体連絡協議会の政平会長から「被爆者は戦争の被害者だ。二度と戦争を繰り返してはいけない。」と、さらに、全農林の藤木さんからは「署名や裁判の傍聴行動、カンパの取り組みなどを含め、それぞれの地域から、今後も取り組みを進めていこう。」とそれぞれまとめがされ、分科会を終了した。

 

 

長崎大会 第5分科会  ヒバクシャⅠ─ヒバクシャの現在

2019年08月08日

被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第5分科会  ヒバクシャⅠ─ヒバクシャの現在

 
日時:8月8日(木)9:30~12:30
会場:NBC別館 3F メディアスリー (長崎市上町1-35/℡095-826-5300)
講師:振津かつみ(医師)、竹峰誠一郎(明星大学教員)
海外ゲスト:ラニー・クラマー(マーシャル諸島・REACH-MI(NGO)代表)
サマンサ・ハナーグ(マーシャル諸島・REACH-MI(NGO)副代表)
 
 
 はじめに、山内武さん(被爆体験者訴訟原告団 第二陣原告団団長)から「被爆体験者」とは何かを話して頂きました。長崎の被爆地域は「旧長崎市」を基本に1957年に制定され、その後徐々に拡大してきましたが、爆心地からほぼ12km、近点7km以内に限られました。爆心地から12km以内であっても旧行政区域外として、被爆者健康手帳の取得が出来ない被爆者は、被爆地域の拡大を求め、現在では「健康診断特例地域」に居る「被爆体験者」として法的には取り扱われることになりましたが、被爆者援護法に基づく「被爆者」ではないということ。しかし、住民は放射能に汚染された空気を吸い、水を飲み、畑の作物を食べ、内部被曝による放射線障害に苦しんできた。明らかに「被曝者」であると訴えられた。
 
 振津かつみさん(医師/チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西)からは、ヒバクの実相を世界に広め、これ以上ヒバクシャを作らせてはいけない。マーシャルの核実験被害者やウラン採掘や核実験被害に苦しめられてきたアボリジニなど先住民との交流・連帯の中で「核と人類は共存できない」との確信を深めてきました。「核時代」を終わらせることをめざして前進していくことが重要である。と訴えられた。
 
 竹峯誠一郎さん(明星大学教員)は、マーシャル諸島での長年(約20年)の聞き取り調査を基に、歴史的経過や現地の状況について報告頂いた。まず、米国は世界初の核実験をニューメキシコで行い、その際に実験場を含む一帯が汚染された。その後、広島・長崎へ原爆投下されたのだが、以降の核実験場の選定をめぐって、米国以外となったのは言うまでもなく最終的にマーシャル諸島に決定した。決定以降、米国の力の脅威(日本に勝利したこと)にマーシャルは承諾せざるを得ず、結果、強制移住が実行され、土地を奪われた。彼らにとって土地は、「文化・存在」を否定されることであった。1946年7月に戦後初の核実験が開始され、1958年まで67回(広島型原爆の7,000発相当)もの原水爆実験が行われ、その間には、「第五福竜丸」ほか千隻もの日本漁船が被曝している。
また、土地を奪われた先住民は被曝と飢えに苦しみ、数回の移住をさせられたが元の暮らしには戻れない。さらには、あらゆる観点から人体実験のデータを得られると被爆地への帰還などをさせられていた。と報告があり、竹峯さんは「唯一の被爆国」との意識では核問題は解決しない。と強く訴えられた。
 
 ラニ・クレーマさん(REACH―MI代表)は、生まれ育った故郷に戻れぬまま亡くなった祖母の無念を涙ながらに話され、サマンサ・ハネルグさん(REACH―MI副代表)は、ルニットドーム(核廃棄物格納施設)の老朽化など今後の大きな課題について報告があり、米国は米国内の核被害者の要求には応じるが、私たちマーシャルの核被害者の要求には応じない、差別的扱いは許せない。マーシャルと世界はつながっている、若い世代に問題を明確に伝え「核廃絶」を実現させたい。と訴えられた。
 
 参加者との質疑もあり、「核」に対する問題意識も良い意味で広がり、共有できたと感じた。世界のヒバクシャの現在を知ることで「真の平和」を実現するには、「核兵器・核施設」の廃絶が優先されなければならないと強く感じた分科会となった。
 
 
 

長崎大会 第3分科会  脱原子力Ⅰ─自然エネルギーの今とこれから

2019年08月08日

被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第3分科会  脱原子力Ⅰ─自然エネルギーの今とこれから

 

長3.jpg

日時:8月8日(木)9:30~12:30

会場:長崎新聞文化ホール 3F 珊瑚の間 (長崎市茂里町3-1/℡095-844-2412)

講師:松久保肇(原子力資料情報室事務局長)、山崎誠(衆議院議員)

海外ゲスト:クラウス・ミンドラップ(ドイツ・社会民主党)

◆初参加者は7割程度

 

 原子力資料情報室の松久保さんからは、廃炉の時代を迎えた原発の現状とエネルギー政策の転換の重要性が示された。現時点では、原発の新増設は想定されておらず、遅くとも2085年までに原発はゼロとなる。原発は高コストな発電方法であり、さらに安全対策費が増加している現在、そのコストはさらに高額となっている。しかも、膨大なプルトニウムを生み出す使用済燃料再処理計画は各国からの懸念の材料となっている。原発を前提とした日本のエネルギー供給計画の破綻は明確であり、原発をゼロにし、原発と化石燃料への補助が8割を占めるエネルギー関連予算を、再エネと省エネを促す予算に組み替える転換戦略が必要だと述べられた。

 衆議院議員の山崎さんからは、「原発ゼロ基本法」をめぐる日本の政治情勢についてお話があった。世界で進む再生可能エネルギーの現状を多数紹介しながら、世界が加速度的に再生可能エネルギーにシフトしている状況を述べられた。一方、衰退する原発に依存している日本は、世界の流れから完全に取り残されている。原発ゼロこそ、日本経済・日本社会の再生の道であるとし、「原発ゼロ・エネルギー転換は未来の希望である」と力強く訴えられた。

 ドイツ社会民主党のクラウス・ミンドラップさんからは、ドイツにおける脱原発事情についてお話があった。2022年には最後の原発が止まり、その後は在来型エネルギーから再生可能エネルギーに転換されていくという世界的にも先進的な事例が紹介された。

 また、参加者からは「廃炉に関する具体的な費用や期間は」、「再生可能エネルギーの比率や日本での再生可能エネルギーの可能性は」、といった質問が出された。

 最後に運営委員から、「私たちが動かないと脱原発は前に進まない。今回学んだことを地域に持ち帰って、具体的な運動につなげよう」とまとめがあった。

 
 

長崎大会 第2分科会 平和と核軍縮Ⅱ─朝鮮半島の非核化と日本

2019年08月08日

被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第2分科会   平和と核軍縮Ⅱ─朝鮮半島の非核化と日本

 
長2.png
日時:8月8日(木)9:30~12:30
会場:NBC別館 2F メディアツー (長崎市上町1-35/℡095-826-5300) 
講師:梅林宏道(ピースデポ特別顧問)
海外ゲスト:スージー・アリソン・リットン(米国・ピースアクション)
ソン・ヨンフン(韓国・参与連帯)
 ◆初参加者は4割程度
 
 
 第二分科会「平和と核軍縮Ⅱ-朝鮮半島の非核化と日本」は、60名参加(内、初参加者20名)するなかで、梅林宏道氏(ピースデポ特別顧問)と海外ゲストのスージー・アリソン・リットン氏(米国・ピースアクション)の両名より、問題提起を頂いた。
 
 梅林氏からは、「北東アジア地域の平和と安全への日本の関与」「グローバルな核兵器廃絶への日本の使命」ということで、①核兵器は誰の手にあっても、絶対悪である、②板門店宣言は中身、プロセスともにかなり具体的な宣言であり、これまでの宣言とは異なる、ただし、南北だけで進めることができないという本質は押さえておくべき、③平壌宣言では非武装地帯だけでなく、半島全域の敵対関係終息を確認したことが重要、④米朝首脳共同声明では大筋の流れは確認できているが、それぞれに課題があり、中身を進めていくためには10年は必要、⑤日本不在の朝鮮半島非核化はかなり不安定であり、北東アジア非核兵器地帯案が最も良いと考える、⑥核兵器禁止条約への日本の参加は「核の傘」政策からの転換が必要であること、などが話された。
 
 スージー氏からは、ピースアクションの進めている具体的な取り組みとして、①米国による核の「先制使用」を禁止する法案の支持、②核攻撃を発射する大統領の一元的な権限を廃止するための法案の支持、③米国が核攻撃を発射するまでの時間を延長すること、④イラン、北朝鮮との極めて効果的な核合意への支持、などがあるという話がされた。
 
 その後、参加者より8件の質疑が出された。
梅林氏に対しては、①地域安全保障機構を準備し、北東アジアの安全保障改善の基礎とするということであるが、日本の果たすべき役割を教えてほしい、②世界の非核兵器地帯の条約が結ばれてきた背景などを教えてほしい、③日本の外交力の衰えを感じるが、北東アジア非核兵器地帯案を進める力が今の日本にあるのか見解を伺いたい、などの質問などがされ、
 
スージー氏に対しては、①ピースアクションの活動でさまざまな法案の支持をしているが、その進捗状況、そしてアメリカの子供たちは平和に対する問題に対してどのように考えているのかを教えてほしい、②ピースアクションの方々が日本の現政権などをどう評価されているかを教えてほしい、などの質問がされた後に、それぞれの講師より現状の説明や見解などが話された。
 
 まとめとして、日本という国がアジアの国からどう見られているのか、日本の外交が問われているなどの発言があったように、戦後74年が経過するなかで、日本が今後どうあるべきなのかが問われている。分散会のテーマでもある、「朝鮮半島の非核化と日本」ということでは、大きく状況が動いている朝鮮半島との関係性も含め、平和に向けての信頼関係をどう構築していくかということを私たち自身もしっかりと受け止め、今後の取り組みに繋げていかなければならないということを確認し、分科会を終了した。
 
 
分科会での質疑とそのことに対する梅林氏、スージー氏のコメントの詳細(PDF) 
 
 
 

TOPに戻る